雑文

コミュニケーションについて

僕が定期的に購読しているblogに「カフェ・ヒラカワ店主軽薄」というものがある。ここで「不可視のコミュニケーション。」というエントリーを読んだ。とてもおもしろいものだと思った。特に、コミュニケーションというものに対する視点がすばらしいと思った…

ブログ・エントリーのための覚え書き

気になっていながらも、判断するための材料が集まらずに、何となく変だなと思っている事柄がいくつかある。忘れないうちにこれらを記録しておこうと思う。材料が集まって、何らかの判断を引き出すことが出来そうになったら、エントリーとして展開してみよう…

麻生首相の所信表明演説の評価から「うまい説明」を考える

国会では麻生首相の所信表明演説を受けて今論戦が行われている。対立する側が、その不備を指摘してマイナスの評価をするのが当然なら、それを支援する与党の方は、優れている点を指摘してプラスの評価をすることになるだろう。これはどちらにも一理ある議論…

うまい説明とは

仮説実験授業研究会の牧衷さんという人が『運動論いろは』(季節社)という本を書いている。牧さんは、いわゆる市民運動の専門家で、そこには長年の経験から得られた豊富な知識と教訓が語られている。運動という予測のつかない、ある意味では混沌とした対象…

ブログ・エントリーのための覚え書き

いくつか気になっていることがあって、いろいろと資料を調べているのだが、なかなか考えがまとまらず資料も集まらないので書けないでいることがある。それを忘れないうちにちょっと記録しておこうと思う。 1 民主党の政策が財源の裏付けがないということに…

誰が優れた人物なのか

二十歳前後の学生の頃、自分の教養を高めたいと思い、そのためにはどのような学習をすればよいかを考えたことがあった。とにかく優れた人物が語ることを理解して、それを通じて教養を高めるということがいいのではないかという結論に達した。しかし、どの人…

汚染米問題に関する論理的な疑問

「<事故米転売>太田農相、事態軽視?「じたばた騒いでない」」という9月12日20時14分配信の毎日新聞の記事によれば、太田農水相は「「(汚染米から検出されたメタミドホスは)低濃度で、人体への影響はないと自信をもって言える。だから、あまりじたばた騒…

注目していた事柄のいくつかについて

山本一太氏が総裁選立候補を断念したというニュースがあった。残念なことだ。立候補に必要な20人の推薦人が集まらなかったという。以前に河野太郎氏が立候補を表明したときも20人の推薦人が集まらずに立候補そのものが出来なかった。そして、河野氏の時…

人間の社会における「交換」の意味

『レヴィ=ストロース』(吉田禎吾、板橋作美、浜本満 共著、清水書院)には次のような記述がある。これも、ある意味ではレヴィ・ストロースのすごさを伝えるものであるが、社会という、自然科学の対象とは全く違う性格を持ったものを、どう認識するかという…

レヴィ・ストロースのすごさ

構造主義を語るときに、人類学者のレヴィ・ストロースは絶対に欠かせない重要な人物となっている。「親族の構造」の解明こそが、構造主義の歴史における金字塔として紹介されている。だが、今までの僕は、このレヴィ・ストロースの業績に対して、いったいど…

新しい概念の獲得は思考の展開にどのような影響を与えるか

ソシュール的な発想で考えれば、言語は、混沌として区別のはっきりしない現実に対して、言語で表現することによって概念の差異をはっきりさせ、現実にある構造を持ち込んでそれを理解しようとする。言語の発生と同時に、現実の対象を概念的に捉えることも可能に…

他人の原稿に赤を入れることの容易さ

マル激の中で、神保哲生さんが何かの折に「他人の原稿に赤を入れるというのは誰でも出来るんですよね」というようなことを語っていたことが、妙に印象的で頭に残っている。これは神保さんが経験的にそういうことがよくあったということで語っていたことだった。…

原子概念誕生の瞬間を想像してみる

原子論というのは、「すべての物質は非常に小さな粒子(原子)で構成される」という主張の事を指す。これは今では科学的に正しいということが証明され、すべての科学者はこのことを前提として科学的な考察をしている。だから「原子論」については、それが正し…

概念獲得の過程を反省してみる

ウィトゲンシュタインは、『論理哲学論考』を 「1 世界は成立していることがらの総体である。」 という言葉から始めている。この命題は、「世界」について語っていて、「世界」の定義でもあるといえる。つまり「世界」の概念を説明する言葉になっている。ウ…

解釈(仮説)はどのようなときに事実(真理)となるか

現実に起こったある出来事を観察したとき、それが確かに「事実」であると判断できるのは、二項対立的な問いに明確に答えられるかどうかで決まる、と僕は考えた。グリーンピースをめぐる事件において、彼らが鯨肉の荷物を「持ち出した」か「持ち出さなかった」かと…

事実(真理)と解釈(仮説)をどう区別するか

マル激では、神保哲生・宮台真司の両氏がその週のニュースについてコメントをする時間が最初にある。本編の議論に入る前に、今日本で起きているさまざまな出来事の中で、流通している情報とその解釈に対して、それは違うのではないかという注意を向けるよう…

メディア・リテラシーについて

マル激にもよくゲストで出ている森達也さんの『世界を信じるためのメソッド』(理論社)という本を読んだ。とても面白い内容だった。副題に「僕らの時代のメディア・リテラシー」とあるように、現在の発達したマス・メディアの時代に、そこから送られてくる情…

正義を実現するためには手段が正当化されるという思想

マル激の366回では、チベット問題を論じて、中国がなぜあれほどまでチベット支配に執着するのかということを議論していた。外交的な利益というものを考えれば、直接支配をしなくても交易などの交渉で有利な手打ちが出来れば、形の上で高度な自治を認めても十…

佐佐木さんの「現代「中華帝国」と中華思想 チベット問題」への考察 2

佐佐木さんの「現代「中華帝国」と中華思想 チベット問題」についてその「(1)はじめに ― 現代中国は単なる「中華帝国」ではない ―」を読んだ限りでの、佐佐木さんの主題と主張について、僕は次のようなものだと受け取った。 1 中国のチベットに対する侵略…

佐佐木さんの「現代「中華帝国」と中華思想 チベット問題」への考察 1

佐佐木さんの「現代「中華帝国」と中華思想 チベット問題」について考えてみたいと思う。まずはそこに書かれている内容の理解に努力を注ぎたい。何らかの主張に対して、それに賛成するにせよ・反対するにせよ、その主張の内容を正確に受け取った上で自分の意…

現代中国の実相

マル激の第218回 [2005年6月4日]では「今中国に何が起きているのか」というテーマでゲストに興梠一郎氏(神田外語大学助教授)を招いて議論している。ここで語られている現代中国の姿というのは、ある意味では驚くべきことばかりで、そんなふうになっている…

チベット問題の合理的な理解

チベット問題を合理的に理解するということは、中国の姿勢・態度を理解してそれを是とするということではない。むしろその逆で、チベットに対する中国の姿勢・態度は明らかに間違っていると思われる。しかしそれにもかかわらず、中国には間違っているという…

「東シナ海ガス田問題」における中国政府の政策への批判

マル激の238回[2005年10月14日] の放送では「まちがいだらけの東シナ海ガス田開発問題」というテーマでゲストに猪間明俊氏 (元石油資源開発取締役)を招いて議論していた。これがたいへん面白い議論で、マル激の紹介文には次のように書かれている。 「東…

空気と文脈

宮台真司氏が「昨年の映画を総括しました〔一部すでにアップした文章と重なりますが…)」という文章で 「携帯小説の編集者によれば、情景描写や関係性描写を省かないと、若い読者が「自分が拒絶された」と感じるらしいんです。情緒的な機微が描かれていない…

他者への伝達

2回ほど前のマル激トークオンデマンドでは、生物学者の福岡伸一さんがゲストに招かれていた。そこでなされていた議論の中心は生命についてなのだが、それ以上に印象に残った言葉は、福岡さんがスキーを習ったときのエピソードだった。そこに、教育というも…

加速度は見えるか?

我々は物理学でニュートン力学の法則を学ぶときに、力は加速度と比例することを教えられる。それは真理であることが確定しているもので、それをちゃんと確認することなく、言葉の上でそれが正しいものだと思い込んで覚えることになる。我々には加速度という…

関数は見えるか?

中学校の数学教育において関数の概念を教えることはかなりの難しさがある。関数の計算を教えるのはそれほど難しくはない。グラフと式の対応関係は方程式に還元できたりするので、一定の手順を覚えるアルゴリズムとして教えることが出来る。掛け算の意味がわ…

因果関係は見えるか?

因果関係というのは、とのあいだに結びつきがある、関係があるということを認識するものだが、これは認識論的にはかなり難しいことではないかと思う。単純に外界を像として反映しているだけでは関係という認識は出来ないからだ。因果関係ではとという二つのもの…

「ノーミソの目」で見る

「ノーミソの目」という言葉は、仮説実験授業研究会でユニークな発表をしていた徳島の新居信正さんがよく使っていた言葉だ。僕は、新居さんが語っていた「ノートはノーミソを写す鏡である」という言葉が、自分の体験ともぴったり合ったこともあって、この言葉が…

「猥褻行為」は存在するか

『社会学の基礎』(有斐閣Sシリーズ)という、大学の教科書として書かれた本の「行為と役割」という章を宮台真司氏が執筆している。ここでは行為の同一性に関して議論を展開しているのだが、二つの行為を比べてそれが同一であるか違うかという判断を3つの…