学者の一流性の考察
今週配信されているマル激のゲストは、青山学院大学教授で、分子生物学が専門の福岡伸一さんだった。僕は、福岡さんという人を、このマル激で初めて見たのだが、この人に一流の匂いを感じた。この匂いはどこから感じたものだろうかというのを反省してみたいと思う。まずは、マル激で福岡さんの発言を巡って語られた内容を箇条書きにしてメモしておこう。
- 狂牛病とは何か
1985年に第1号が発見された。
元々は、風土病としての羊のスクレイピー病が発端
死んだ羊を牛の餌として加工したことが原因と考えられている。
自然の食物連鎖に反することが経済原理のもとに行われていた。
なぜ1985年に発生したか?1970年代の中東戦争が影響したのか?肉骨粉飼料の製造に対して燃料として使われていた石油の高騰によって、加熱が弱かったために、羊のスクレイピー病が飼料の中に残ったのではないか。
- プリオン説への疑問
プリオン説を前提にした思考と、他の可能性の存在も含めた思考
(プリオン説はまだ証明された真理ではない。反証可能性を残した仮説であるという認識。)
プリオン説の不合理性
(出来すぎたご都合主義的な仮説)
- 相関関係と因果関係
家族旅行の回数と感情的に切れる子供との間に相関関係があるとき、これを因果関係と取り違える。「家族旅行をたくさんするから、子供が切れない」という理解をしてしまうことの間違い。これは本質と抹消との取り違えに見える。家族旅行の回数に「家族関係がよい」という本質を見て、「家族関係がよいから、子供が切れない」と言うことなら、因果関係にも説得性がある。
- リスク(選択によって発生する危険)論
特定危険部位の除去さえすれば安全か?つまりリスクは回避出来るか?
特定危険部位が本当に危険部位なのかどうか。そこだけが本当に危険なのか。
リスクの許容に関する議論。どの程度のリスクなら許容出来るのか。
算定不可能な損害をもたらすリスクをどう捉えるか。
リスクを回避する方法があるのに、それが低いからという理由で受認してもいいのか。リスクがあっても安い牛肉が食えた方がいいのか。
前期のリスク論(リスク評価=発生確率×損害の算定)
後期のリスク論(計算ではなく、回避の方法の存在こそが重要)
- 科学論
全頭検査は非科学的か?全頭検査の本当の目的は何か?
科学として狂牛病の原因を解明することと、現実的な予防効果を上げることとは別
(これは、かつて脚気の原因が分からなかったときに、効果があったと言うことで玄米を食べさせることを治療法としたことと似ている。)
プリオン説の歴史に見る科学本質論
(プリオン説を仮説として事実を解釈すれば、いままでの事実はほとんど解釈可能である。つまり過去については正しいプリオン説が、未来に対して有効性を持つかと言うことが、これが「科学」であるかどうかの本質に関わっている。)
福岡さんの話には非常に説得力がある。論理的にすべて納得が出来る。ここに僕は福岡さんの一流性を見る。