2008-06-01から1ヶ月間の記事一覧

もし、言語化する以前の概念(あらかじめ与えられた概念)が存在するとして、果たしてそれの差異を認識できるか?

言語化する以前の概念というのは想像することがたいへん難しい。どのような概念を思い浮かべても、その概念を示す言葉が頭に浮かんできてしまうからだ。何か分からないがぼんやりと頭に浮かぶようなもの、というものが想像できない。言語のあふれる世界の中…

概念獲得の過程を反省してみる

ウィトゲンシュタインは、『論理哲学論考』を 「1 世界は成立していることがらの総体である。」 という言葉から始めている。この命題は、「世界」について語っていて、「世界」の定義でもあるといえる。つまり「世界」の概念を説明する言葉になっている。ウ…

示差的であることは言語の本質か

みつひろさんという方から「ソシュールの命題(主張)の論理的理解」というエントリーのコメント欄に、「示差的」ということに関するコメントをもらった。このコメントは、「示差的」という言葉の意味を理解するにはたいへん分かりやすい指摘になっている。「示差的…

日本語を学ぶことは日本的なもの(考え方・感覚)に同化することを伴う

僕は夜間中学に勤務をして今年で18年になるが、その間大部分を日本語を教えるということをしてきた。夜間中学には外国籍の人が多く、まずは普通の会話が出来るようにして、日常生活が送れるようにしなければならないという要求がある。そのために、本来は…

ソシュールの命題(主張)の論理的理解

内田さんの『寝ながら学べる構造主義』には次のようなソシュールの言葉が引用されている。 「もし語というものがあらかじめ与えられた概念を表象するものであるならば、ある国語に存在する単語は、別の国語のうちに、それとまったく意味を同じくする対応物を…

素人がソシュールを学ぶ意義

僕は、日本語教育に携わり、専門としていた数学も数理論理学という、どちらかといえば言語学に近いものだった。その意味ではソシュールを「言語学」の象徴と考えれば、僕はまったくの素人とは言えないかもしれない。だがソシュールを専門に勉強してきたわけで…

解釈(仮説)はどのようなときに事実(真理)となるか

現実に起こったある出来事を観察したとき、それが確かに「事実」であると判断できるのは、二項対立的な問いに明確に答えられるかどうかで決まる、と僕は考えた。グリーンピースをめぐる事件において、彼らが鯨肉の荷物を「持ち出した」か「持ち出さなかった」かと…

事実(真理)と解釈(仮説)をどう区別するか

マル激では、神保哲生・宮台真司の両氏がその週のニュースについてコメントをする時間が最初にある。本編の議論に入る前に、今日本で起きているさまざまな出来事の中で、流通している情報とその解釈に対して、それは違うのではないかという注意を向けるよう…

内田樹さんの分かりやすさ 10

内田さんの『寝ながら学べる構造主義』では構造主義の四銃士としてレヴィ・ストロースを解説している一章がある。レヴィ・ストロースは、構造主義においては最も重要な思想家の一人として語られることが多い。構造主義の考え方を使って大きな成果を上げた人…

内田樹さんの分かりやすさ 9

内田さんは『寝ながら学べる構造主義』の中で、ロラン・バルトの「作者の死」という概念を説明する。この概念は、非常に分かりにくいものだと思う。この概念に最初に僕が出会ったのは、これを批判する三浦つとむさんの文章でだった。三浦さんは「東西粗忽長屋…

内田樹さんの分かりやすさ 8

内田さんは、フーコーによる狂気の考察を『寝ながら学べる構造主義』(文春新書)の中で解説をしている。これをウィキペディアの「ミシェル・フーコー」などで見ると次のように書かれている。 「フーコーは『狂気の歴史』(1961年)で、西欧世界においてかつて…

内田樹さんの分かりやすさ 7

現代思想というのは非常にわかりにくい内容を持っている。哲学者が語ることでも、古代ギリシアや中世ヨーロッパくらいまでなら、その内容に難しさはあっても、何を言っているのか内容そのものがつかめないということはない。内容を正しく受け止めるのは難し…

内田樹さんの分かりやすさ 6

適切に表現された文章を読んだり、あるいは発言を聞いたりしたとき、我々は「目から鱗が落ちる」という経験をすることがある。これは、今までは何となくそう思っていたという、何かもやもやとしていた事柄が、まるで霧が晴れるかのようにはっきりと見えてくる…

内田樹さんの分かりやすさ 5

内田さんの『寝ながら学べる構造主義』(文春新書)でのソシュールの解説には、次のような文章が引用されている。 「それだけを取ってみると、思考内容というのは、星雲のようなものだ。そこには何一つ輪郭の確かなものはない。あらかじめ定立された観念はない…

秋葉原の事件を「テロ」と受け止める感性

今週のマル激では、東浩紀氏(批評家・東京工業大学世界文明センター特任教授)をゲストに迎え、秋葉原で起こった「通り魔事件」に関して議論をしていた。東氏はこの事件を「テロ」という言葉で表現していた。これは僕には見えていなかった視点だったが、東氏の…

内田樹さんの分かりやすさ 4

内田樹さんによって僕はソシュールの再評価をするきっかけをつかんだのだが、これは内田さんがソシュールの専門家ではなかったからそのような問題意識で内田さんの文章を読むことが出来たのではないかと感じる。ソシュールの専門家というのは、すでにソシュ…

内田樹さんの分かりやすさ 3

ソシュールに対する再評価を教えてくれたのも内田さんの『寝ながら学べる構造主義』(文春新書)という小冊子だった。ソシュールについても、僕は三浦さんの批判を通じてまず知ったために、何となく間違っているのかなという思いを抱いていた。特に当時養護学…

内田樹さんの分かりやすさ 2

内田さんの『寝ながら学べる構造主義』(文春新書)の中から、なるほどそのとおりだと思えるような説明を抜き出して、それがどうして分かりやすいのかということを考えてみようと思う。内田さんは第1章で構造主義に先行する思想史を作った巨人として、マルク…

内田樹さんの分かりやすさ 1

僕が内田さんの文章に接した最初のものは、『寝ながら学べる構造主義』(文春新書)という本だった。僕は、この本を読んで初めて「構造主義」というものがどういうものであるかという具体的イメージをつかむことが出来た。それまでは、三浦つとむさんの「構造主…

メディア・リテラシーについて

マル激にもよくゲストで出ている森達也さんの『世界を信じるためのメソッド』(理論社)という本を読んだ。とても面白い内容だった。副題に「僕らの時代のメディア・リテラシー」とあるように、現在の発達したマス・メディアの時代に、そこから送られてくる情…

内田樹さんの語る中華思想 2

内田さんが語る中華思想のまず第一の特徴は、それが「ナショナリズム」ではないということだった。内田さんは、なぜ「ナショナリズム」ではないことを強調したのだろうか。この帰結そのものは、内田さんが定義するイメージから引き出せる論理的な帰結であって、…

内田樹さんの語る中華思想 1

内田樹さんは、2008年04月21日に書いた「中国が「好き」か「嫌いか」というような話はもう止めませんか」というエントリーの中で、そこに書かれた事柄を「書いていることは『街場の中国論』の焼き直しで」と言っている。中華思想について、このブログのエントリ…

好き・嫌いの感情論ではない中国論

田中宇さんの「自衛隊機中国派遣中止を解読する」という記事は非常に興味深い面白い内容を持ったものだった。自衛隊機を中国での大地震の救援のために派遣するというのは、単純に考えるといい面と悪い面とがそれぞれ見つかる。いい面は、 救援物資を運ぶことに…

正義を実現するためには手段が正当化されるという思想

マル激の366回では、チベット問題を論じて、中国がなぜあれほどまでチベット支配に執着するのかということを議論していた。外交的な利益というものを考えれば、直接支配をしなくても交易などの交渉で有利な手打ちが出来れば、形の上で高度な自治を認めても十…