2007-09-01から1ヶ月間の記事一覧

南郷継正さんの「しごき論」

武道家の南郷継正さんの『武道の理論』(三一新書)を読んだのはかなり以前のことなのだが、そこにたいへん面白い「しごき論」がある。「しごき」は、武道の上達のためには絶対的に必要であり、しかも有効に働くということを前提にしながらも、それは行き過ぎ…

タダ乗り平和主義

今週配信されているマル激では、テロ特措法との関連で国防問題あるいは安全保障の問題が議論されている。そのときに宮台氏が語っていたのが「タダ乗り平和主義」というものだ。これは「タダ乗り」という言葉に、「払うべきコストを払わない」というニュアンスが込…

『論理哲学論考』における「法則」という言葉

野矢茂樹さんが翻訳したウィトゲンシュタインの『論理哲学論考』(岩波文庫)には、用語の索引がついている。その中から「法則」という言葉に関する命題を拾ってみて、ウィトゲンシュタインが「法則」という言葉をどのように使っているかを考えてみようと思…

用語の使い方とその意味

関さんから「数学的法則性とその現実への適用」のコメント欄に「法則」という言葉の使い方に対する違和感を語るコメントをもらった。これは、その違和感というのは十分理解できる。僕も、「科学的な」という修飾語を付した「法則」に関しては、仮説実験の論理によ…

論理はなぜ正しいのか

哲学者の野矢茂樹さんは『ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』を読む』(哲学書房)という本の中で、論理を「語りえぬもの」と書いている。論理というのは、ある事柄が正しいことを示すのに使われるが、論理そのものの正しさを問題にされることがない。む…

数学的法則性とその現実への適用

数学教育で難しいものに、アルゴリズムが確立されているものを論理的に正しいということをよく納得して理解するということがある。それは、アルゴリズムが確立されているので、手順さえ覚えれば必ず正解を導くことが出来る。それが正解であるということを理…

法則は、抽象化された実体に対してのみ成立する

法則性の認識(理解)を考えていたら、これは運動の認識(理解)とよく似ているのではないかということが頭に浮かんできた。運動というのは、変化という属性を本質としている。どのような形であれ、物質的存在に何らかの変化が認められれば、それは運動している…

不毛な二項対立

仲正昌樹さんの文章には「不毛な二項対立」ということがよく出てくる。これは、お互いに相容れない主張(矛盾した主張)を展開していて、相互の間ではまったく話し合いにならないような状態を指していう。これは、どちらかが間違えていて、正しい結論に落ち着く…

「正当性」の判断

「正当性」という言葉は、辞書的には「社会通念上また法律上、正しく道理にかなっていること」と説明されている。本質は「道理にかなっている」ということで、論理的に正しいということが要請される。難しいのは「社会通念上」あるいは「法律上」ということだろう。こ…

慣性の「原理」

板倉聖宣さんは、『科学と科学教育の源流』(仮説社)という本の中で、慣性の法則>ではなくという言葉を使っている。「慣性」と呼ばれるものが現実世界の法則性を認識したものであれば当然「法則」と呼ばれてしかるべきなのだが、なぜこれを「原理」と呼んでいるの…

権力概念の形成

萱野稔人さんは『権力の読み方』(青土社)という本で「権力」について論じている。それは、「権力」という概念について、ぼんやりとした不明瞭な状態がだんだんと明確になっていく発展の過程を綴っているようにも見える。これは、法則性の認識の発展段階で…

経済学が設定する実体

三土修平さんの『はじめてのミクロ経済学』(日本評論社)という本から、経済学が設定する実体と、その実体が従う法則性というものを考えてみたいと思う。現象から実体が抽象され、その抽象的実体が従う論理法則を、現象に再び問い返すことによってその抽象が…

ケプラーが設定した実体

武谷三男さんは、三段階論を説明するとき、「現象論的段階」としては天体の観測の精密な記録を行っティコ・ブラーエを例にあげて、ティコの段階を「現象論的段階」として提出している。そして3つの法則を発見したケプラーを「実体論的段階」として例にあげている…

反対のことは せず させず

牧衷さんの『運動論いろは』という本には、表題のような「反対のことは せず させず」という格言のようなものが載っている。これがもし格言として提出されているなら、それは発想法のようなものとして理解できるだろう。格言というのは、ことわざのようなも…

現実に存在する実体と実体論的段階で対象にしている実体

関さんから「モデル理論としての経済学の法則性」のコメント欄に、たいへん興味深いコメントをもらった。このコメントに答えるには、コメント欄の短い文章では真意が伝わらないのではないかと思い、改めて考えをまとめてみようと思う。それは三段階論の実体…

人間の心に関する法則性

心理学や精神分析は科学ではない、ということは僕もそう思っているのだが、そのように宮台氏なども語っていたように記憶している。宮台氏の言い方では、人間の心というのは、その当人は自分で感じることが出来るが、それを他者が客観的に観察することが出来…

人間の意志が関わる行動の法則性

今週配信されたマル激では、小幡績さんというゲストを招いてバブルの現象というものを分析していた。この分析では、人間が意志の自由によって行動を選択する際、自由によって無秩序に選択されるように見える行動の中に、ある種の法則性を解釈する余地がある…

モデル理論としての経済学の法則性

小室直樹氏は、モデル理論としての経済学について『資本主義原論』(東洋経済新報社)の第2章で説明している。このモデル理論というのは、現実の経済現象を単純化して、本質的であろうと考えられる部分を抽象(末梢的な部分を捨象)して、現実の対象そのままで…

小室直樹氏が語る資本主義の法則性

小室直樹氏が『資本主義原論』(東洋経済新報社)という本で、資本主義に関する法則性を語っている。これは、今まで考えてきた三段階論的な意味での法則性とややニュアンスが違うのを感じる。この違いをちょっと考えてみたいと思う。小室氏は、見出しとしても…

権力は悪か?

僕は以前には左翼だと思われていたので、権力に対しては悪だと決め付けているのではないかと思われていたふしがある。いわゆる左翼にはそういうイメージがあるのだろう。しかし、僕は左翼的なものとのかかわりはあるが、それと深くコミットしたことはない。…

言葉の定義と法則性――数学的公理と定理の関係との類似性

萱野稔人さんの『権力の読み方』(青土社)という本は、読み方によっては法則性をたくさん読み取ることが出来る、法則性の宝庫のような本だ。だが、この法則性をよく見てみると、それは法則性を利用してある言葉の定義をしているようにも見える。この法則性を…

商品の価値に関する法則

マルクスは、『資本論』冒頭の部分で商品の価値(=交換価値)を分析している。そこには 1クォーターの小麦=aツェントネルの鉄という等式が書かれている。これは、板倉聖宣さんが語っていた等号(イコール)の弁証法性で解釈すると分かりやすい。等号というの…

法則的認識とアルゴリズム

数学的な法則の一つにアルゴリズムと呼ばれるものがある。これは計算手順が定まっていると考えられるもので、その手順で計算を進めればある種の数学の問題の解答が自動的に得られるというものになっている。その手順が固定して定まっているという点で、これ…