2007-05-01から1ヶ月間の記事一覧

萱野稔人さんの国家に関する考察を方法論として読んでみる

萱野さんの国家論というのはたいへんユニークで面白いものだと思う。国家論というのは、どちらかというとこれまではマルクス主義的な観点から論じられたりすることが多く、イデオロギー的な前提を強く持っていたように感じる。国家というものが民衆にとって…

イデオロギーを排した思考の方法論と、イデオロギーに支配された思考の誤謬論

イデオロギーとは、「政治・道徳・宗教・哲学・芸術などにおける、歴史的、社会的立場に制約された考え方。観念形態」と辞書的には定義されている。ということは、イデオロギー的なものに影響された思考というのは、その帰結が「歴史的、社会的立場に制約された…

治安問題に対する関心

都知事選での石原慎太郎氏の圧勝を考えたとき、あるブログで見た「治安問題」への取り組みが大きな要素だったということに頷いたものだった。他の候補に比べて、石原氏が主張する治安対策のほうが、多くの人の信頼を勝ち得たという指摘は正しいものだと感じた。…

国家とは何か

萱野稔人さんが『国家とは何か』(以文社)という本を書いている。この本の前書きに当たる部分の「イントロダクション」というところで、この本が目指しているところの全体像について書いている。それは、タイトルにあるとおり、「国家とは何か」ということなの…

個人としての自分が見てそう思うのか、誰が見てもそう思うのか

久しぶりにすごい人間に出会った。マル激のゲストで語っていた萱野稔人という人物だ。その明快な論理展開は、宮台真司氏の文章を初めて目にしたときと同じ印象を感じた。この人は優れた専門家だと思える人はたくさん見つけることが出来る。マル激にゲストで…

資本主義にとって戦争は不可避なものか

以前どこかで、資本主義は永遠の発展を運命付けられているというようなことを聞いた記憶がある。語っていたのは宮台真司氏だっただろうか、小室直樹氏だっただろうか。現在の日本は低成長時代になっているが、資本主義というのは、安定成長という現象はあり…

マルクス主義の理論的誤りについて

社会主義国家に誤りがあったというのは、それが崩壊したという結果からほぼ明らかだろうと思う。前回の指摘が正しいかどうかは異論があるかもしれないが、社会主義という考え方に間違いがあったのは誰もが認めるだろう。もし、そこに間違いがなかったのなら…

社会主義国家の誤りについて

社会主義国家が崩壊したとき、その現象をどう解釈するかというのはマルクス主義の陣営にとっては深刻な問題だっただろうと思う。これが、マルクス主義の理論的な誤りを証明する実験と捉えるのか、理論には誤りがなかったが、その現実の適用において失敗した…

極めて論理的・合理的に考察する人間が最終的にはなぜ感情に任せた行動をするのか

僕は、マル激で紹介された『論座』の「赤木論文」なるものを読んでいないのだが、この赤木氏がネット上で公開している他の文章を見つけて読んでみた。「なぜ左翼は若者が自分たちの味方になるなどと、馬鹿面下げて思っているのか」と題された文章だった。こ…

合理的判断を拒否するメンタリティ

郵政民営化問題をマル激で議論していたとき、小泉自民党が提出していた「郵政法案」が論理的にいかに間違っているかということを荒井広幸さんや山崎養世さんの話を聞いているとよく分かった。郵政省に限らず、役所の改革が必要だということは分かるのだが、…

日本の軍隊と軍人に対する評価について

クリント・イーストウッド監督の「硫黄島からの手紙」は、僕はまだ見ていないのだが、それを見た多くの人は映画の主人公とも呼べる栗林忠道という軍人に大きな魅力を感じたのではないかと思う。その人間性の豊かさと頭脳の優秀さには感嘆するばかりの感じを…

日本は近代社会か

表題にあるような質問に答えようとするとき、普通は、肯定的に答えるか・否定的に答えるかという対立した答を思い描く人が多いのではないだろうか。近代社会というものに対してある種のイメージを持っていて、そのイメージに合致するなら肯定的な答が結論と…

行為の基礎にあるものは善意なのか悪意なのか

母親を殺害した高校生のニュースに比べると「社保庁汚職:指導医療官、東京歯科大同窓会から現金」で伝えられるニュースは、日本社会ではよく見られる現象であり平凡なもののように見える。しかし、衝撃的なニュースのほうが、その内実は案外と抽象しやすく…

問題のレベルと社会学的な視点

宮台真司氏は「社会学講座 連載第15回:人格システムとは何か?」の中で次のように語っている。 「■心理学は、現行の制度や文化を「前提にする」学問です。社会学は、現行の制度や文化を「疑う」学問です。社会学によれば、「社会」とは私たちのコミュニケー…

人間の主観を客観的に理解できるか

主観と客観は対立するものとして現前する。主観は、ある個人の頭の中に存在するもので、その個人を離れて外に飛び出すものではない。それに対して、客観と呼ばれるものは、個人との結びつきを断ち切って、個人とは独立に存在するものとして対象化される。だ…

教育は手段か目的か

教育を手段か目的かと考えるとき、それを自分にとってのもの・あるいは自分の子供にとってのものというふうに個人的な立場で考えると、個人にとっていいものという価値判断的な要素が入ってくる。そうすると、手段というのは何か価値的には貶めてしまうように感…

偉大なる素人としての山本七平氏

僕は、山本七平氏に対してはあまりよいイメージを持っていなかった。最初に山本氏を知ったのは、イザヤ・ベンダサンというユダヤ人が書いたと言われている『日本人とユダヤ人』を批判したものを見たときだっただろうか。今では、このイザヤ・ベンダサンとい…

「パラダイム理論」とイデオロギー支配ということ

板倉聖宣さんは、『子どもの学力 教師の学力』という本で、「パラダイム理論」というものに触れている。板倉さんによれば、パラダイムというのは、という言葉で説明されている。これは、抽象された結論だけを語っているので、捨象された過程を知らなければ、…

仮説実験の論理

仮説実験の論理とは、仮説が科学になるという飛躍をもたらす論理のことである。僕はこの論理を板倉聖宣さんを通じて知った。科学というのは、一般的・抽象的な意味での真理のことを指すのだが、これは全称命題の形を取る。したがって厳密に考えれば、それが…

ジョン・テイラー・ガットさんはどんな教師だったのか

ジョン・テイラー・ガットさんは、義務教育学校の欠陥を鋭く指摘し、それ以上ないくらいの悪口でそれを批判している。しかし、ガットさんは最優秀教師として表彰されてもいるのである。日本的な感覚では、たとえ欠陥がある制度であっても、その制度の下で最…

学校教育の「第四の目的」

ジョン・テイラー・ガットさんは、『バカをつくる学校』の中で「アメリカの伝統的な教育制度には、建国当初から次のような明確な目的があった」と語って、次の3つの目的を挙げている。 1 善良な人間を育てること 2 善良な市民を育てること 3 生徒一人ひ…

事実に対する希望的判断と客観的判断

仮説実験授業の提唱者の板倉聖宣さんは、『子どもの学力 教師の学力』(仮説社)の中で次のようなことを書いている。 「私はもともと自然科学のほうを中心にやっておりますが、先ほど言いましたように、自然科学では「どうしても子どもたちが知らなければい…

『在日・強制連行の神話』(鄭大均・著、文春新書)

表題の本の著者である鄭大均氏は、「在日コリアンには、強制連行による被害者やその子孫であるというイメージや印象がある」と、この本の冒頭で語っている。しかし僕は、どちらかというと「強制連行」という強いイメージはあまり持っていなかった。それこそ…

学校という制度の欠陥

我々の社会にはさまざまな問題がある。学校の問題もその一つだが、その問題を生み出した原因が個人に帰するのか・制度に帰するのかは重要な問題だ。もし学校の問題が教師という個人に帰するのであれば、それは現政府や文科省が言うように、教師の資質の向上…

学力は下がったのか?

メーデーの帰りに寄った書店では、もう一冊面白い本を購入した。板倉聖宣さんの最新刊で『子どもの学力 教師の学力』(仮説社)という本だ。板倉さんの論理と主張はますます明快ではっきりしてきている。ここまですっきり言ってくれると爽快な気分になる。子…

義務教育における7つの教育方針 3

義務教育学校の6つ目の弊害は「条件つきの自尊心」という言葉で語られている。ジョン・テイラー・ガットさんはまず次のように書いている。 「六つ目の教育方針は「条件つきの自尊心」である。親から無条件に愛されている子どもは、自尊心が強く、従わせるのが難…

義務教育における7つの教育方針 2

ジョン・テイラー・ガットさんの『バカをつくる学校』で語られている義務教育学校の3つ目の弊害は「無関心」というものだ。ジョン・テイラー・ガットさんは、「私は、たとえ子どもたちが何かに興味を示しても、あまりそれに夢中にならないように教える」と…

教育の荒廃に対する日教組批判

メーデーの集会の後に寄った書店で、買わなかったのだが手にしてぱらぱらとめくってみた本が『マンガ 日狂組の教室』という本だった。これは、日の丸君が代に反対し、自虐史観の歴史を教える日教組教員を揶揄しているような漫画だった。この漫画の表現はあま…

義務教育における7つの教育方針 1

『バカをつくる学校』(成甲書房)からジョン・テイラー・ガットさんの主張を細かく見ていこうと思う。まずは最初の章から「7つの大罪」として断罪されているものを見ていこう。前回の最後に紹介した、「一貫性のなさ」がその第1番目なのだが、これは、教…

「従軍慰安婦問題」と米下院の「対日非難決議案」

少々古くなってきた話題だが、ようやく考えがまとまってきたのでそれを記しておこうと思う。この話題が出始めたころ、マル激の中で宮台真司氏が、この非難決議案のひどさというのを語っていた。それは全く歴史的事実に基づいたものではなく、ある意味ではで…