2008-07-01から1ヶ月間の記事一覧

前者の欠点を克服していく法をめぐる論理の流れ

宮台氏は、「連載第二一回:法システムとは何か?(下)」でルーマンが語る法理論について説明をしている。これを前回の流れと関連させて考えてみると、ハートの法理論が不十分であった部分を補ってそれを克服するものとしてルーマンの理論が提出されているよ…

「言語ゲーム」の概念を機能的側面から考えてみる

宮台氏は、「連載第二〇回:法システムとは何か?(上)」の中で「ハートの言語ゲーム論的な法定義」というものを紹介している。「言語ゲーム」という概念は、これまでも何回か考えてみたが、その概念をつかむことが非常に難しい、高度に抽象化された概念である。具…

「法」の本質を求めることに有意義な意味はあるのか?

「連載第二〇回:法システムとは何か?(上)」で宮台氏は、「法」を「紛争処理の機能を果たす装置の総体」と定義している。これは、システムというもので社会を捉える発想からはごく当然の定義だと、今ではそのように僕は感じる。システムというのは、その機能に注…

宗教システムの具体的現れと社会の中での位置付け

「連載第一九回:宗教システムとは何か(下)」で宮台氏は、「〈世界〉内の事象は基本的に偶発的ですが、大抵は事後的な前提挿入により馴致可能です」と語っている。これは、偶発性がある種の合理的解釈で片付けられるなら、それによって不安がもたらされること…

機能(システム)としての「宗教」概念

宮台氏は、「連載第一八回:宗教システムとは何か?(上)」で下位システムの一つである「宗教システム」について書いている。下位システムとは、上位のシステムが、その機能の達成のために機能を分化してその内部に部分として作りあげたシステムになる。この下位…

社会システムの下位システムへの「分化」という概念

下位システムとは、上位システムに対する概念として提出されているものだ。システムの場合は、あるシステムが部分的にもっと小さなシステムを含んでいるという状態が、全体と部分という対立ではなく、上位と下位という対立として把握されている。これは、上位シス…

「自由」を脅かすものが存在しても、なおかつ「自由」の存在を主張できるか?

「自由」については、すでに「連載第7回 選択前提とは何か」で語られていて、それは「選択前提が与えられているが故に「滞りなく選択」できる状態だ」と定義されていた。具体的には (1)選択領域(選択肢群)が与えられ、及び/或いは (2)選択チャンスが与えられ…

システムとしての「人格」……それは実体としての「人格」とどう違うか

宮台真司氏が「連載第15回:人格システムとは何か?」で説明している「人格」とは、システムとしての人格だ。システムというのは装置として比喩的に語られることが多い。その装置は、ある種の機能を持っているもので、関数のブラックボックスのようなものだ。その…

学術用語としての「役割」の概念

宮台真司氏が「連載第一四回:役割とは何か?」で語る「役割」という概念を考えていきたいと思う。この概念は、果たしてどのような目的の下で提出されているのだろうか。宮台氏は、「「役割」とは、ヒトに与えられるカテゴリー」だと語る。あらかじめ「役割」が分か…

論理の展開の理解とはどういうことか

宮台氏の社会学入門講座では、毎回その前の回の復習をしてから次の回の本題に入るような展開になっている。「連載第一四回:役割とは何か?」でも「役割」の説明に入る前に、その前の回で解説した「行為」についての確認を書いている。この確認を読んでいると、論…

思考の展開という概念運用のための「行為」の概念

宮台真司氏が「連載第一三回:「行為」とは何か?」で提出する「行為」については、すでに一回説明されたものである。その時は、外に現れる客観的観察の対象としての「行動」に対して、意味的な要素をもつものとして「行為」が定義された。つまり、「行動」としては同じ…

「社会統合」の概念

宮台真司氏が「連載第十二回:社会統合とは何か?」で解説するのは「社会統合」についてだ。これは、「社会」の「統合」について説明しているものと考えられる。この二つのうち「統合」のほうは「二つ以上のものを合わせて一つにすること」と辞書的には説明される。こ…

「偶発性」の概念とそれが二重であることの理解

宮台真司氏が「連載第十回:二重の偶発性とは何か」で説明するのは「二重の偶発性」というものだ。ここで語られている「偶発性」という言葉は辞書的な意味に近い。それは基本的には「必然性」に対立するものとして理解される。宮台氏の言葉で言えば、可能性としては…

機能的側面から見た「制度」の概念

宮台真司氏が「連載第十一回:制度とは何か?」で語るのは「制度」という言葉の概念だ。これの辞書的な意味は、「社会における人間の行動や関係を規制するために確立されているきまり」というもので、「ルール」という言葉で言い換えることの出来るものだろう。ルー…

機能的側面に注目した「宗教」と「他者」の概念

宮台真司氏が「連載第九回 予期とは何か?」で触れていた「宗教」と「他者」の概念についてもう少し詳しく考えてみようと思う。宮台氏は、ここで「宗教」について「宗教とは、前提を欠いた偶発性を、無害化して受け入れさせる機能的装置です」と語っている。ここで…

信頼の本質としての「予期」の概念

宮台真司氏が「連載第九回 予期とは何か?」で語る「予期」という概念を考えてみたい。この回の講座では「予期」のほかにも重要な概念がいくつか提出されているのだが、まずは「予期」という最重要な概念について、その明確なイメージをつかむことに努力してみようと…

社会における「合意」と「信頼」(個人の場合とどう違うか?)

宮台真司氏は「連載第八回 社会秩序の合意モデルと信頼モデル」では、「合意モデル」と「信頼モデル」という考察で、社会が持つ秩序(確率的に低い状態が実現すること)の出発点となるものを考えている。社会が定常性という秩序を持つのは、ある種の状況の変化が特定…

選択前提理解のための「自由」の概念

宮台真司氏は「連載第7回 選択前提とは何か」の中で「自由」の概念について詳しく説明している。これは「選択前提」という言葉の理解のために、その「選択」が「自由」に選べるということの意味の理解が必要だからだ。「自由」に選べないような、これしか選択肢がないと…

「構造」という概念

宮台真司氏が「連載第六回 構造とは何か」で説明している「構造」という概念について考えてみよう。まずはこれの辞書的な意味から生まれてくるイメージを考え、その概念を考えてみよう。そして、宮台氏が説明する概念が、それとどのような面で重なるか、どのような…

システムの「秩序」という概念

宮台真司氏は「連載第四回:秩序とは何か?」では「秩序」という概念を説明している。この概念も、普通に辞書的に受け止めている「秩序」という言葉の意味と、宮台氏がここで語っている意味とでは大きな違いがあるのを感じる。「秩序」という言葉が普通に使われる場…

社会システム理解のための「意味」「行為」「コミュニケーション」という概念

宮台真司氏は「連載第五回 社会システムとは何か」では「社会システム」というものを説明している。これは、宮台氏が考察しようとしているシステム一般を表す「定常システム」に対して、それが社会の中に見つかるという意味での特殊性を持っている対象として考えら…

「近代」と「一般理論」の概念

宮台真司氏の「連載第二回:「一般理論」とは何か」では、「社会」という概念に続いて、「近代」と「一般理論」の概念について解説されている。この二つの概念も、辞書的な意味としてはぼんやりとイメージできるものの、明確に他のものと区別してこうだ、というような…

「システム」概念の難しさ

宮台真司氏は「連載第三回:システムとは何か?」の中で「システム」というものについて語っている。「システム」については、これまでも何度か考えてきたが、その概念をつかむことの難しさを今でも感じている。「システム」という言葉を辞書で引くと「制度。組織…

社会「科学」の可能性

自然科学の分野が「科学」であるという共通理解は、自然科学系(日本では理科系、宮台氏の言葉でいえば数学系)の人間にはだいたい共有されている認識だと思う。それは、板倉さんが語る意味での「科学」という概念で考えても、確かに「科学」だと納得できるものだ。自然…

宮台真司氏が提出する新たな概念

宮台真司氏が書いた「社会学入門講座」から、その科学性を評価してみようと思ったのだが、残念ながら法則性とそれから導かれる予想を読み取ることが出来なかった。これが読み取れなければ、板倉さんが言う意味での「仮説実験の論理」による「科学」の判定が出来ない…

心理学や言語学は「科学」になりうるか

ソシュールは言語学を科学として確立したといわれている。それまでの事実の寄せ集めを解釈していただけの言語理論を、科学という理論体系として打ち立てたと評価されているのだろう。この解釈学から科学への飛躍は、その研究対象として「ラング」というものを提…

言語の「価値」という概念は、思考の展開にどのような新しさをもたらすか

内田さんが語るソシュールには言語の「価値」という概念が登場する。この「価値」は辞書的な・日常的な意味とは違うものを含んでいる。そこには新しい概念が表現されている。この「価値」という言葉によって新たに発見された概念は、思考の展開においてどのような利…

新しい概念の獲得は思考の展開にどのような影響を与えるか

ソシュール的な発想で考えれば、言語は、混沌として区別のはっきりしない現実に対して、言語で表現することによって概念の差異をはっきりさせ、現実にある構造を持ち込んでそれを理解しようとする。言語の発生と同時に、現実の対象を概念的に捉えることも可能に…

他人の原稿に赤を入れることの容易さ

マル激の中で、神保哲生さんが何かの折に「他人の原稿に赤を入れるというのは誰でも出来るんですよね」というようなことを語っていたことが、妙に印象的で頭に残っている。これは神保さんが経験的にそういうことがよくあったということで語っていたことだった。…

原子概念誕生の瞬間を想像してみる

原子論というのは、「すべての物質は非常に小さな粒子(原子)で構成される」という主張の事を指す。これは今では科学的に正しいということが証明され、すべての科学者はこのことを前提として科学的な考察をしている。だから「原子論」については、それが正し…