メロドラマの面白さ

マーヴィン・ルロイ監督の古い映画「哀愁」というのを見た。ヴィヴィアン・リー主演の悲恋のメロドラマだ。互いに愛し合いながらも、運命にもてあそばれるその悲恋に、観客はきっと涙するのだろうと思う。
僕は、同じマーヴィン・ルロイ監督の「心の旅路」というメロドラマが好きなのだが、こちらはちゃんとハッピーエンドで終わるので、見ていて気持ちは落ち着く。ハッピーエンドにならない「哀愁」の方は、物語の背景となっている戦争や、愛し合いながらも結ばれないと言う、その障害となっている家柄などに、封建的な制度が人間を苦しめている点など、ハッピーエンドの物語よりも、現実というものについて考えさせるメッセージを多く見ることが出来る。この映画の気持ちの落ちつかなさは、このメッセージ性にあるのだろうと思う。メッセージが含まれた表現は、ノー天気に楽しむだけでは終わらない。
しかし、メロドラマの面白さというのは不思議なものを持っている。登場人物は、たいてい美男美女であり、能力にも長けている。とても感情移入して自分を重ね合わせられる存在ではない。そこまで自分に図々しくはなれない。それなのに、主人公の運命に一喜一憂し、悲しいときには泣き、ハッピーエンドでは自分も幸せになれる。メロドラマが感情を揺さぶる作用というのは面白いものだと思う。一度深く考えてみたいものだ。