『無限論の教室』(野矢茂樹・著、講談社現代新書)

この本は、今日図書館で借りたのだが早くも半分読み進んだ。一言で言えば面白いという感想だ。面白いのでどんどん読み進むことが出来て、半分まで行ってしまった。数学屋にとって、特に論理面が好きな僕にとってはこの本は、関心を持っていることのほとんどすべてを語っていると言ってもいい。
野矢さんというのは哲学が専門の人だが、特に論理関係の哲学が専門と言うこともあって僕の関心を引くのだろうと思う。それにしても、哲学者というのはものすごく厳密な議論をするのだなあと感心する。数学者以上に厳密に論理的に考察する。
特に面白さを感じたのは、実無限と可能無限を区別して、実数全体の集合というものを考えると、これは可能無限としては考えられないので、本当にあるのかと疑問を提出しているところだ。数学屋は、これが存在してくれないと数学の理論のほとんどが無くなってしまうので、存在していることはほとんど前提として考えているように感じる。だが、確かに実数全体というのは、構成的に作り出すことは出来ない。自然数のように、1を足すことによって次々と生み出すと言うことが出来ないのだ。
論理的には、有理数よりも無理数の方がたくさんあるはずなのに、無理数をたくさん作り出すことは出来ない。無理数の全体が分からないのに、それが分かったかのように実数全体という集合を作ることに無理がないか、と言われると無理がありそうな気がしてくる。
無限というのはよく分からない存在で、これの扱いを失敗すると深刻なパラドックスが避けられなくなる。無限という対象を厳密に考えると面白いなと感じる。でも、これを面白いと感じる人間は、もしかしたら少ないんだろうな。本当に面白いと思うんだけれど。