無限の面白さ

最近、野矢茂樹さんという哲学者にはまっている。何でこの人をもっと前から読まなかったんだろうかとちょっと悔やんでいる。論理やウィトゲンシュタインなど、僕が関心を持っていることをこれほど面白く語る人なのに、どうして若いころに出会わなかったんだろうなと、残念に思っている。
しかし、今だからこそ野矢さんが語ることがよく分かるのかも知れない。若いころには、哲学は死んだという三浦さんの宣言に共感していたこともあり、哲学者が語ることは末梢的で重箱の隅をつつくようなものだとして受け取れなかったかも知れない。
しかし、いま野矢さんを読んでいると、これが重箱の隅ではなくて、本質的で重要な意義あることを議論しているように読めるから不思議だ。野矢さんの論理の展開の仕方というのが、僕の好みにぴったり合うからだろうと思う。ヤフーの書籍販売で野矢さんの本をたくさん見つけて購入申し込みをしてしまった。
野矢さんの面白さは、無限というものに対する本当に厳密な慎重さだ。無限こそが人間の認識にパラドックスをもたらす重要な要素であるということをこれほど自覚して論理を展開している人はいないのではないかと思う。その無限を扱う、というよりも扱わざるを得ない数学というのは、どのようにしてこのジレンマを逃れるかというのがまた面白い。数学から無限を追放してしまうと、ほとんど数学が出来なくなってしまう。しかし、無限はパラドックスという、数学が排除しなくてはならない矛盾を生む。哲学的な無限と、数学的な無限の激しいせめぎ合いのようなものが面白い。野矢さんの哲学と、数学における無限を考えることが、今の僕の最大の関心事と言えるだろうか。