『同一性・変化・時間』(野矢茂樹・著、哲学書房)

同一性と変化というものは、形式論理的に捉えれば絶対的に対立する相容れないものである。それが同一性を保っていれば、どこも変化していないし、どこかが変化していればそのことで同一性は崩れている。
しかし、世の中の現象というのは、変化しているにかかわらず同一に見えるという対象があるのを感じる。この矛盾が存在するのを、形式論理とどう折り合いをつけるかと言うことは重要なことだ。矛盾があるのだから形式論理は信用出来ないとするのか、矛盾を否定する形式論理を信用して現実の方を否定するのかどちらかの道を取る人が多いのではないだろうか。つまり、そう見える現実は錯覚なのだとする考え方だ。
哲学の発展の歴史も、この両方の間を揺れ動いてきたように感じる。しかし、ここに形式論理の限界を見て、同一でありながら同時に変化しているという視点を持つ弁証法論理を考えることも出来る。
僕は、同一性と変化の問題を弁証法の問題として考えているのだが、哲学者の野矢さんはまた違う視点を語っているようにも見える。哲学者というのは、とても厳密な議論を展開する人のようにも見える。この本は、自分が持っている問題意識と重なる部分を感じたので、そこから買おうという動機が生まれてきた。今3分の1位を読み進んだ。