『「リアル」だけが生き延びる』(平田オリザ・著、ウェイツ)

平田オリザさんの本は、講談社新書の『演劇入門』を手にしたのが最初だった。その発想の斬新さは、まったく考えたこともない視点を教えてくれ、しかもその視点から見ることの素晴らしさをたくさん教えてくれた。
『演劇入門』でも、「演劇のリアル」とは何かと言うことが語られていたが、「リアル」と言えばなんでも現実だという単純な発想ではなく、演劇には演劇の世界のリアルがあるということは新鮮な驚きだった。現実の日常を演劇の世界にそのまま持っていっても、それは演劇として少しもリアルではない。
この発想で数学を考えると、数学にも数学の「リアル」があるのだなと感じる。それは、全くの抽象の世界であるにもかかわらず、それであればこそ数学としてのリアルがあるのだと感じる。