内田樹

内田さんのフェミニズム批判の意味を考える 1

「仮言命題そのものの真理性とその前件と後件の真理性」という古いエントリーに、瀬戸智子さんから「母親と保育所とおむつ」というトラックバックをもらった。僕はおおむね内田さんの主張を肯定的に受け取っており、瀬戸さんは否定的に受け取っているように…

瓜田に沓を納れず、李下に冠を正さず

『期間限定の思想(おじさん的思考2)』(晶文社)の中で内田樹さんがタイトルのような古諺を使って面白い公人論を語っている。政治家を始めとする「公人」は、どのような存在でなければならないのか、それを実に分かりやすく直感的に理解出来るように語っ…

内田樹的言説と宮台真司的言説

内田樹さんは『ためらいの倫理学』の中で「私は宮台真司という人の書いたものを読んで共感したことが一度もない。どうしてなのか知らないけれど、どこかで必ず違和感のあるフレーズに出くわすのである」と書いている。僕は、内田さんにも宮台氏にも共感し、…

不当な差別・バッシングに合理的な理由はあるか

内田樹さんは『私家版・ユダヤ文化論』という本で「なぜ、ユダヤ人は迫害されるのか」ということを論じている。この問題に対する答は、「ユダヤ人迫害には根拠がない」と答えるのが「政治的に正しい解答」だという。つまりユダヤ人迫害は不当な差別・バッシ…

教育者としてのリスペクトを感じる内田樹さん

もう一人、僕が強いリスペクト(尊敬)を感じる学者に内田樹さんがいる。内田さんに感じるリスペクト感は、宮台氏と仲正さんに感じるものとはちょっと違う。宮台・仲正両氏については、あくまでも学者としての面にリスペクトを感じるのだが、内田さんには教…

「普遍性」の認識

内田樹さんが「2006年05月02日 村上文学の世界性について」というエントリーを書いている。僕も村上春樹の小説が好きで、有名なものは一通り読んでいる。しかし、ファンを自認するほど読み込んではいない。もっとも好みに合うのは『ノルウェイの森』で、これ…

兵法の奥義

内田樹さんの『他者と死者』(海鳥社)の「4沓を落とす人」には、「兵法の奥義」が語られている。これは、抽象的に述べれば 「欲望するものは欲望されたものに絶対的に遅れる」 と語られる。この「絶対的に遅れる」状態に相手を落とすとき、常に勝つという…

正しい現状認識とその肯定判断について

内田樹さんが「2006年04月26日 ナショナリズムと集団性」というエントリーで、「遠からず、日本はナショナリストだらけになるであろう」という予想を語っている。この予想は、日本の現在を、「「若年弱者」を大量発生させている」という現状分析をした結果か…

論理の持つ非人情

内田樹さんが「2006年04月25日 非人情三人男」というエントリーを書いている。ここで語られている「非人情」とは夏目漱石の造語であるらしい。ヤフーの辞書によればその意味は、 「1 他人に対する思いやりに欠けること。冷淡で人情がないこと。また、そのさ…

内田樹さんの文章の誤読について

「2004年03月02日 スーパー負け犬くんはいかにして生まれたか?」という内田さんのエントリーに次のような文章がある。 「「勝ち犬」量産システムに身を置くということは、逆に言えば、その「勝ち犬」たちを自分の「サクセス」のめやすとして採用せざるを得…

実定的な抵抗感と欠性的な抵抗感

内田樹さんは『映画の構造分析』の中で、何かに「引っかかる」感覚を「鈍い意味」という言葉で形容している。これは、確かな解釈が出来ないと言うことで、明確にならないという意味での「鈍さ」を持っている。「脈絡のなさ」あるいは「シニフィエなしのシニ…

作者の死

「作者の死」と言うことは、三浦つとむさんが、構造主義者の妄想として退けていた事柄だった。三浦さんは、「作者の死」と言うことを作者の存在がないということと受け取った。もし、作者がまったく存在しないのなら、作品は自動的に生み出されると言うこと…

内田樹さんの一流性

内田樹さんは、その評価が両極端に別れる人で、とんでもない間違った言説を撒き散らす人だと評価する人もいれば、僕のように、その語ることに一流の香りがすると高く評価する人もいる。僕が、内田さんが一流の言論人だと確信したのは『寝ながら学べる構造主…

「贈与」の考察 2

ジョン・ロックについて調べようと思って図書館で借りた本の中に『貨幣の思想史』(内山節・著、新潮選書)という本があった。これがなかなか面白かった。人間にとって貨幣がどういう意味を持っているのか、なぜ貨幣を求めるのか、というのを考察している。…

「贈与」の考察 1

内田さんが<「労働」は「贈与」である>と主張している、と誤読する人たちがたくさんいるのだが、これは、「2005年05月19日 資本主義の黄昏」の中の「自分が「他者への贈与」の主体になること(それが「労働」ということの本質である)」という言葉を誤読し…