教育

アルゴリズムの心地よさ

ナンバープレイス・イラストロジック・ループコースというパズルに共通するのは形式論理のみを使ってそのパズルの解答を求めるということだ。ナンバープレイスで言えば、ある数字がその枠に「入る」か「入らない」かという排中律と、同時に両方が成立しない…

みんな仲良し教育の欠陥

楽天ブログでmsk222さんが「みんなで仲よし、って…」というエントリーを書いている。ここに書かれていたことに、以前から問題意識を感じていたので、コメントを書かせてもらった。それは、みんな仲良し教育が、共同体主義を助長して、個人の主体性を育てるこ…

シェーマとしてのたとえ話

シェーマというのは故遠山啓先生が、水道方式という計算体系の教育に際して、数という抽象的対象を教えるために考案したタイルという教具の特徴を指して使った言葉である。タイルという教具は、10進法の構造を教えるための教具であり、加減乗除の計算アル…

教育は手段か目的か

教育を手段か目的かと考えるとき、それを自分にとってのもの・あるいは自分の子供にとってのものというふうに個人的な立場で考えると、個人にとっていいものという価値判断的な要素が入ってくる。そうすると、手段というのは何か価値的には貶めてしまうように感…

ジョン・テイラー・ガットさんはどんな教師だったのか

ジョン・テイラー・ガットさんは、義務教育学校の欠陥を鋭く指摘し、それ以上ないくらいの悪口でそれを批判している。しかし、ガットさんは最優秀教師として表彰されてもいるのである。日本的な感覚では、たとえ欠陥がある制度であっても、その制度の下で最…

学校教育の「第四の目的」

ジョン・テイラー・ガットさんは、『バカをつくる学校』の中で「アメリカの伝統的な教育制度には、建国当初から次のような明確な目的があった」と語って、次の3つの目的を挙げている。 1 善良な人間を育てること 2 善良な市民を育てること 3 生徒一人ひ…

学校という制度の欠陥

我々の社会にはさまざまな問題がある。学校の問題もその一つだが、その問題を生み出した原因が個人に帰するのか・制度に帰するのかは重要な問題だ。もし学校の問題が教師という個人に帰するのであれば、それは現政府や文科省が言うように、教師の資質の向上…

学力は下がったのか?

メーデーの帰りに寄った書店では、もう一冊面白い本を購入した。板倉聖宣さんの最新刊で『子どもの学力 教師の学力』(仮説社)という本だ。板倉さんの論理と主張はますます明快ではっきりしてきている。ここまですっきり言ってくれると爽快な気分になる。子…

義務教育における7つの教育方針 3

義務教育学校の6つ目の弊害は「条件つきの自尊心」という言葉で語られている。ジョン・テイラー・ガットさんはまず次のように書いている。 「六つ目の教育方針は「条件つきの自尊心」である。親から無条件に愛されている子どもは、自尊心が強く、従わせるのが難…

義務教育における7つの教育方針 2

ジョン・テイラー・ガットさんの『バカをつくる学校』で語られている義務教育学校の3つ目の弊害は「無関心」というものだ。ジョン・テイラー・ガットさんは、「私は、たとえ子どもたちが何かに興味を示しても、あまりそれに夢中にならないように教える」と…

教育の荒廃に対する日教組批判

メーデーの集会の後に寄った書店で、買わなかったのだが手にしてぱらぱらとめくってみた本が『マンガ 日狂組の教室』という本だった。これは、日の丸君が代に反対し、自虐史観の歴史を教える日教組教員を揶揄しているような漫画だった。この漫画の表現はあま…

義務教育における7つの教育方針 1

『バカをつくる学校』(成甲書房)からジョン・テイラー・ガットさんの主張を細かく見ていこうと思う。まずは最初の章から「7つの大罪」として断罪されているものを見ていこう。前回の最後に紹介した、「一貫性のなさ」がその第1番目なのだが、これは、教…

戦後民主主義教育の欠陥はアメリカの民主主義教育の欠陥と同じだった

昨日のメーデーの集会の帰りに寄った書店で刺激的で面白い本を見つけた。『バカをつくる学校』(成甲書房)という本で、著者はジョン・テイラー・ガットという、ニューヨーク州で最優秀教師として表彰された人だ。ここではアメリカの義務教育学校が批判され…

教育におけるエリート主義と平等主義

小室直樹氏の戦後民主主義教育への批判の中心にあるのは、その平等主義だった。平等ということは、民主主義においては重要な考えであるには違いないが、それが「主義」になってしまうと、条件を考慮することなく「平等がいい」という前提で考えが進められて…

戦後民主主義教育

戦後も60年以上も経つと、どの時期の教育を「戦後民主主義教育」と呼んでいいか分からなくなる。僕が中学時代をすごしたのは昭和40年代半ばくらいだが、この時期は戦後も20年くらいたっていて、もはや戦後ではないと言われてから久しい。僕が教員にな…

多様な視点

今週配信されている「週刊ミヤダイ」では赤ちゃんポストをめぐる議論を展開している。これも、日本の戸籍制度との関連など興味深い議論を宮台氏は展開していたが、この途中で現れた「教育」というものの社会科学的な定義が僕には印象に残った。宮台氏は、「…

民主党提案の「日本国教育基本法」案 考察3

民主党の「日本国教育基本法」の考察を続けたいと思う。「日本国教育基本法案 解説書」に書かれている第四条(学校教育)から見ていきたいと思う。ここで目に付くのは、「日本に居住する外国人」という記述があることだ。教育の現場にあまり詳しくない人は、…

誰が真の「愛国者」なのか

「改正」された教育基本法では、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する」「態度を養う」という文言が入っており、これが「愛国心」の押しつけになるのではないかという危惧が語られている。この法案反対の気分としては、「愛国…

成熟社会にふさわしい教育とは

宮台真司氏によれば、現在の日本は近代成熟期になった成熟社会だという。近代成熟期に入る前は、近代過渡期と呼ばれ、ここでは「急激な重化学工業化と都市化の時代」が特徴で、「国民はみな仲間だ」という国民意識が支配していたという社会構造を持っていた…

民主党提案の「日本国教育基本法」案 考察2

民主党の「日本国教育基本法」の考察をしたいと思う。基本的に、僕はマル激での鈴木寛氏の見解に感服したので、その鈴木氏が作ったこの法案にも高い評価をしている。さて、参考にするのは「日本国教育基本法案 解説書」で、前回は前文を読んでみた。その時に…

民主党提案の「日本国教育基本法」案 考察1

マル激のゲストの人選というのは、なかなかすごいと思うものがあるのだが、民主党の参議院議員の鈴木寛氏もなかなかすごい人物だと思った。非常に明快な論理を語る人だし、物事のつながりを深く洞察している人に見えた。教育基本法の問題も、教育の問題とし…

教育基本法「改正」法案成立の社会的背景

教育基本法「改正」案が、自公の賛成多数で可決された。「改正」と括弧付きで表現しているのは、この法案が辞書的な意味で本当に「改正」になっていると思えないので僕は括弧付きで表現している。宮台氏を始めとする多くの知識人が、この法案ではいま教育が…

教育基本法改正のメンタリティ

教育基本法改正案が衆院本会議を通過した。衆議院は与党が圧倒的多数を占めているのだから、どのような法案であろうと、与党がそれを通したいと思えば通る状態にはなっている。だから、これはある意味では予想されたものなのであるが、各種新聞社説やインタ…

疑問を感じる教育界の二つの事件

いじめによる自殺ではないかと思われている事件において、学校側が「いじめの事実が確認出来ない」と主張することが続いているようだ。これは学校側の認識の甘さや責任逃れという面が感じられて、外から見ている人間にはケシカランことのように映るのではな…