論理

論理学における仮言命題と日常言語における仮言命題

仮言命題というのは、「AならばB」という言葉で表現されるような命題のことで、Aを前件(前提)と言い、Bを後件(結論)などと言う。この仮言命題を論理学、特に形式論理学で扱う時は、AやBの内容については全く触れることはない。形式論理は、命題の内容…

論理的整合性が取れる問題とそうでない問題

中国が現在チベットに対して取っている政策的姿勢は、マスコミなどで与えられている普通の情報だけから考察しようとすると、その論理的整合性・すなわち「中国が正しい」という帰結を導くのは困難である。「中国は間違っている・けしからん」という結論を持っ…

前提の違いが結論に与える影響

自民党の河野太郎衆議院議員のブログに「大本営発表と提灯持ち」という興味深い一文を見つけた。これが論理的な観点から面白いと思うのは、河野さんが反論している厚労省の言い分というのが、形式論理的には必ずしも間違っているとは言えないのだが、年金の…

論理の前提としての「事実」と現実解釈の真理としての「事実」

野矢茂樹さんが解説するウィトゲンシュタインの発想を考えてみると、「世界」を「成立している事柄」という「事実」から出発していることが分かる。しかし、ウィトゲンシュタインは、この「事実」が何故に「事実」なのか。つまり、どうやってそれが実際に成立していること…

ウィトゲンシュタインによるラッセルのパラドックスの解決

ウィトゲンシュタインの基本的発想は、野矢茂樹さんに寄れば、ウィトゲンシュタインの関数概念ではラッセルのパラドックスが生まれるような自己言及文は言語の意味として無意味になってしまうということだ。それは論理形式からは排除されるので、論理的な言い方…

論理解明のためのウィトゲンシュタインの関数

野矢茂樹さんが紹介するウィトゲンシュタインの関数の具体例を通じて、その関数概念の把握と、それがどのようにして論理構造の解明に役立てられるのかを考えてみたい。野矢さんは、概念理解の目的のために非常に単純な世界を設定する。名として設定されているの…

フレーゲ・ラッセルとウィトゲンシュタインの関数概念の違い

フレーゲの発想は、野矢さんによれば、述語を関数で表現することによって論理の記号化に成功したというものだ。述語は日本語で言えば、動詞あるいは形容詞で表現されるか、名詞に判断の助動詞を伴った形でなされる。たとえば次のように。 1 地球は「自転している…

ラッセルのパラドックスを回避するウィトゲンシュタインのアイデア

ラッセルのパラドックスというのは、「嘘つきのパラドクス」と同様に、自己言及によって矛盾が導かれてしまう種類の論理的なパラドックスになっている。現実を誤って認識したために、現実存在に反する判断が生じてしまったような、「ゼノンのパラドックス」のような…

パラドックスとは何か

パラドックスという言葉は辞書的に解釈すれば、逆理ということになり、理に反することを主張していると受け取られるような言説を指す。語源的にもパラドックスは、通説(ドクサ)に反する(パラ)というギリシア語からきているらしい。このような曖昧な定義にかな…

論理トレーニング 25 (論証の構造と評価)

それでは野矢さんが提出する練習問題を考えてみよう。 問1 次の文章から論証の構造を取り出し、論証図を作成せよ。(1) 1 たぶん彼女は遅れてくる。だって、 2 今日は土曜日だから、 3 道は渋滞してると思う。それに、 4 彼女、時間にだらしないだろ。 …

論理トレーニング 24 (論証の構造と評価)

例題2では「導出」の正当性についての評価がトレーニングとして取り上げられている。「導出」というのは、どのような場合に「正しい」と判断されるのかということだ。これは、論理的に結論が導かれるということの評価になるのだが、論理的に結論が導かれる…

論理トレーニング 23 (論証の構造と評価)

この章の最初の例題は次のものである。 例題1 次の文章から論証の構造を取り出し、論証図を作成せよ。 1 犯人はAかBだ。だが、 2 AはいつもCと仕事をする。 3 ときにはそれにDも加わることがある。 4 今度の犯行ではCにはアリバイがある。だから…

論理トレーニング 22 (論証の構造と評価)

論証を理解し評価するに際して重要なのは,「論証」と「導出」を区別して、別々に理解し評価するということだと野矢さんは注意する。「論証」というのは、その主張の全体構造に関わるもので、「導出」というのは、部分的ないくつかの「結論」を導くためのも…

論理トレーニング応用4 ソシュールはどんなことを考え、どこが優れていたのか

論理トレーニングの応用として、優れた言説がいかに優れているかという、もっと建設的な分析もしてみたいと思うので、内田樹さんの『寝ながら学べる構造主義』の中から、ソシュールに関する章を取りだして考察してみようかと思う。僕はソシュールに関しては…

論理トレーニング応用2 内田樹さんの「私がフェミニズムを嫌いな訳」の論理的考察2

斉藤さんが、内田樹さんの「私がフェミニズムを嫌いな訳」を「為にする議論」と判断していることについて、論理的な考察をしていこうと思う。まず「為にする議論」の概念だが、これを僕がどう捉えているかを述べておいて、その概念に照らして、内田さんの文…

論理トレーニング応用3 内田樹さんの「私がフェミニズムを嫌いな訳」の論理的考察3

斉藤さんの「内田がほぼ田嶋陽子ひとりをフェミニスト代表であるかのごとく例示しつつ行うフェミニズム叩き」と「内田は随所で、自分に対する批判には一切回答しないと公言している」という部分について感じる違和感について分析してみようと思う。まずは例…

論理トレーニング応用1 内田樹さんの「私がフェミニズムを嫌いな訳」の論理的考察1

論理トレーニングのとりあえずの基礎的訓練が一通り終わったので、ここでその応用を考えてみたいと思う。本来の目的は、『バックラッシュ』(双風社)という本の斎藤環論文「バックラッシュの精神分析」に感じた違和感が、果たして論理的なものが原因で起こ…

論理トレーニング 21 (議論の組み立て)

次の課題問題は以下のものである。 問5 次の文章において、その主題、問題、主張を、それぞれまとめよ。(必ずしも問題文からの抜き書きではなく、自分で的確にまとめよ。) 「不妊は病気だろうか。いま、妻の側に原因がありそうな場合を考えてみよう。最近…

論理トレーニング 20 (議論の組み立て)

野矢さんの解答がない課題問題を考えてみよう。まずは次の問題だ。 問4 次の文章をより論理的に明確になるように接続関係を明示して書き直せ。 「日本工業規格(JIS)の定義に従えば、「誤差」とは「測定値から真の値を引いた値」とされるが、真の値が不…

論理トレーニング 19 (議論の組み立て)

練習問題の問3は次の問題である。 問3 次の文章を読み、根拠の関係にあるものをすべて取り出し、その関係を、「1→(2〜5)」や「(1,2)←3」のように文番号と記号を用いて答えよ。 1 刺身は活け作りに限るかといえば、そうでもない。 2 締めたば…

論理トレーニング 18 (議論の組み立て)

さて、長い問題文の問2を見ていこう。 問2 次の文章において、その主題、問題、主張を、それぞれまとめよ。(必ずしも問題文からの抜き書きではなく、自分で的確にまとめよ。) 「今日の日本では、人体の一部の無償提供は禁止されていない。献血や、骨髄や…

論理トレーニング 17 (議論の組み立て)

さて、野矢さんが提出する練習問題を考えていこう。まずは次の問題だ。 問1 次の文章をより論理的に明確になるように接続関係を明示して書き直せ。 「慣れないスピーチをするようなとき、口の中がカラカラに渇くが、危険な状況に陥ると、一般に動物の身体は…

論理トレーニング 16 (議論の組み立て)

論理トレーニングの次の例題は以下のものである。 例題3 次の文章を読んで、問に答えよ。 1 考えてみると、私たちの翻訳語というのは、ずいぶん奇妙な言葉である。 2 その翻訳語自体の意味は、むしろ乏しいことが多い。しかし、 3 それ自体に意味が乏し…

論理トレーニング 15 (議論の組み立て)

野矢さんが提出する次の例題は文章が非常に長い。慎重に構造をたどっていこう。 例題2 次の文章において、その主題、問題、主張を、それぞれまとめよ。(必ずしも問題文からの抜き書きではなく、自分で的確にまとめよ。) 「自然科学の強みは実験ができるこ…

論理トレーニング 14 (議論の組み立て)

議論の組み立ての訓練として提出されている問題を考えてみよう。まずは例題として出されている次の問題だ。 例題1 次の文章をより論理的に明確になるように接続関係を明示して書き直せ。 「現在の金融引き締め政策は、海外諸国の好況に支えられた輸出の伸び…

論理トレーニング 13 (接続の構造と議論の組み立て)

野矢さんが提出する、接続の構造を求める最後の課題問題は次のようなものだ。 問6 次の文章を読んで問に答えよ。 1 人間の脳には皺がある。 2 これは、われわれが大量の情報を脳で処理しなければならないからである。すなわち、 3 脳において高度な役割…

論理トレーニング 12 (接続の構造)

野矢さんが提出する次の課題問題を考えてみよう。 問5 次の文章を読んで問に答えよ。 「ディズニーランドが不況にも強い最大の理由は、それが「カルト的ビジネス」の特徴を持っているからです。普通の人が普通の遊園地に行ったならば、一つの乗り物には一回…

論理トレーニング 11 (接続の構造)

さて、解答のない課題問題を考えてみようと思う。まずは次の問題からだ。 問4 次の1〜5の接続構造を記号と番号を用いて図示せよ。 1 一般に「人殺し」を問題視する人たちは、「殺す者」と「殺される者」が互いに相手を「人」として見ていることを、簡単…

論理トレーニング 9 (接続の構造)

さて、前回積み残した問題の解答を考えてみよう。問題は次のものだ。 問2 次の文章を読んで問に答えよ。 「優秀な技術は、もちろん販売を成功させるための一つの要素ではあるが、その寄与する程度を過大に評価してはならない。技術の独占は意外と長続きしな…

論理トレーニング 8 (接続の構造)

さて、次に野矢さんが提出する練習問題を見てみよう。これも接続の構造を分析するものだ。 問1 以下の文章は、日本の「洋間」を訪れた外国人がその部屋を「和風」だといって賞賛するという設定の発言である。1〜5の接続構造を記号と番号を用いて図示せよ…