宮台真司

『14歳からの社会学』 卓越主義的リベラリズムとエリート

仮説実験授業の提唱者の板倉聖宣さんは、民主主義を「最後の奴隷制」と語っていた。奴隷というのは意志のある主体的な存在とは認められず、その持ち主の意志に従ってどうにでもなる存在だ。民主主義における人間も、自らの意志に反して他者の意志を強制され…

『14歳からの社会学』 社会におけるルールの正当性

宮台真司氏は『14歳からの社会学』の第2章で社会のルールについて語っている。社会にある種のルールが存在するのはある意味では当たり前で、そのルールにほとんどの人が従っているときは、それがルールであることさえも意識せずにいるだろう。しかし、そのル…

『14歳からの社会学』 本当にみんな仲良しなのか?

宮台真司氏が『14歳からの社会学』という本を書いた。この本は、14歳でも読めるように、知識と経験に乏しい人でもその内容が分かるように配慮されて書いてある。一つの社会学入門書と言っていいだろう。子供のための入門書は、例えば「14歳のための○○」とい…

『亜細亜主義の顛末に学べ』(宮台真司・著、実践社)

この本は、「亜細亜主義の顛末に学べ」と題されているのに、「亜細亜主義」についてはほとんど具体的な記述がないという不思議な本だ。「亜細亜主義」についてはすでに一定の予備知識を持っているという前提で書かれているようだが、その「顛末」をどう理解…

理解の道具としての形式論理 6

今回宮台真司氏の「連載第二三回:政治システムとは何か(下)」の中で取り上げるテーマは「権力反射」と「権力接続」という概念だ。これはかなり複雑な概念で、しかも高度に抽象的なものだ。それゆえ理解をすることがたいへん難しい。この概念は「権力源泉…

理解の道具としての形式論理 5

さて前回引用しておいただけの宮台真司氏の「連載第二三回:政治システムとは何か(下)」の次の文章の考察をしてみよう。 「以上の復習を纏めると、権力を可能にする了解操縦とは、相手の了解において「権力主題を与えて回避的状態を構成する」ことだと言え…

理解の道具としての形式論理 4

宮台真司氏の「連載第二三回:政治システムとは何か(下)」で次に論じられている「権力の人称性」ということの意味を考えてみようと思う。これは「最も重要な了解操縦」と書かれている。宮台氏の権力論では、直接の物質的な力そのものを「権力」と呼んでい…

理解の道具としての形式論理 3

宮台真司氏の「連載第二三回:政治システムとは何か(下)」に書かれていることで、今回は「宮台理論の特徴は、権力が服従者の了解(選好と予期)に即して定義されることです。了解の正しさは問われません」ということの意味を考えてみよう。宮台氏の「権力…

理解の道具としての形式論理 2

宮台真司氏の「連載第二三回:政治システムとは何か(下)」に書かれている文章を一つ一つ、論理的に理解するということを目指して細かく見ていきたいと思う。前回に続く文章で今回理解を図るのは、宮台氏の「権力の予期理論」に関係する文章だ。それは、宮…

理解の道具としての形式論理 1

宮台真司氏の「連載第二三回:政治システムとは何か(下)」という「社会学入門講座」の最終回に当たる回はたいへん難しい。この内容は、宮台氏の『権力の予期理論』(勁草書房)という本の内容にも通じるもので、この本がまたとてつもなく難しい内容を持っ…

政治的決定に人々が従うための源泉としての「権力」の概念

宮台氏の「社会学入門講座」での、いよいよ最後に登場する「政治システム」の概念の理解に向かいたいと思う。「政治システム」とは「連載第二二回:政治システムとは何か(上)」によれば「社会成員全体を拘束する決定──集合的決定という──を供給するような…

「特定人称性/汎人称性/奪人称性」の概念

「連載第二一回:法システムとは何か?(下)」の終わりの部分で、宮台氏は、ルーマンの「法的決定手続が予期の整合的一般化」をもたらすという考えがはらんでいる問題を解決することを目的として、表題にあるような「特定人称性/汎人称性/奪人称性」という概…

前者の欠点を克服していく法をめぐる論理の流れ

宮台氏は、「連載第二一回:法システムとは何か?(下)」でルーマンが語る法理論について説明をしている。これを前回の流れと関連させて考えてみると、ハートの法理論が不十分であった部分を補ってそれを克服するものとしてルーマンの理論が提出されているよ…

「言語ゲーム」の概念を機能的側面から考えてみる

宮台氏は、「連載第二〇回:法システムとは何か?(上)」の中で「ハートの言語ゲーム論的な法定義」というものを紹介している。「言語ゲーム」という概念は、これまでも何回か考えてみたが、その概念をつかむことが非常に難しい、高度に抽象化された概念である。具…

「法」の本質を求めることに有意義な意味はあるのか?

「連載第二〇回:法システムとは何か?(上)」で宮台氏は、「法」を「紛争処理の機能を果たす装置の総体」と定義している。これは、システムというもので社会を捉える発想からはごく当然の定義だと、今ではそのように僕は感じる。システムというのは、その機能に注…

宗教システムの具体的現れと社会の中での位置付け

「連載第一九回:宗教システムとは何か(下)」で宮台氏は、「〈世界〉内の事象は基本的に偶発的ですが、大抵は事後的な前提挿入により馴致可能です」と語っている。これは、偶発性がある種の合理的解釈で片付けられるなら、それによって不安がもたらされること…

機能(システム)としての「宗教」概念

宮台氏は、「連載第一八回:宗教システムとは何か?(上)」で下位システムの一つである「宗教システム」について書いている。下位システムとは、上位のシステムが、その機能の達成のために機能を分化してその内部に部分として作りあげたシステムになる。この下位…

社会システムの下位システムへの「分化」という概念

下位システムとは、上位システムに対する概念として提出されているものだ。システムの場合は、あるシステムが部分的にもっと小さなシステムを含んでいるという状態が、全体と部分という対立ではなく、上位と下位という対立として把握されている。これは、上位シス…

「自由」を脅かすものが存在しても、なおかつ「自由」の存在を主張できるか?

「自由」については、すでに「連載第7回 選択前提とは何か」で語られていて、それは「選択前提が与えられているが故に「滞りなく選択」できる状態だ」と定義されていた。具体的には (1)選択領域(選択肢群)が与えられ、及び/或いは (2)選択チャンスが与えられ…

システムとしての「人格」……それは実体としての「人格」とどう違うか

宮台真司氏が「連載第15回:人格システムとは何か?」で説明している「人格」とは、システムとしての人格だ。システムというのは装置として比喩的に語られることが多い。その装置は、ある種の機能を持っているもので、関数のブラックボックスのようなものだ。その…

学術用語としての「役割」の概念

宮台真司氏が「連載第一四回:役割とは何か?」で語る「役割」という概念を考えていきたいと思う。この概念は、果たしてどのような目的の下で提出されているのだろうか。宮台氏は、「「役割」とは、ヒトに与えられるカテゴリー」だと語る。あらかじめ「役割」が分か…

論理の展開の理解とはどういうことか

宮台氏の社会学入門講座では、毎回その前の回の復習をしてから次の回の本題に入るような展開になっている。「連載第一四回:役割とは何か?」でも「役割」の説明に入る前に、その前の回で解説した「行為」についての確認を書いている。この確認を読んでいると、論…

思考の展開という概念運用のための「行為」の概念

宮台真司氏が「連載第一三回:「行為」とは何か?」で提出する「行為」については、すでに一回説明されたものである。その時は、外に現れる客観的観察の対象としての「行動」に対して、意味的な要素をもつものとして「行為」が定義された。つまり、「行動」としては同じ…

「社会統合」の概念

宮台真司氏が「連載第十二回:社会統合とは何か?」で解説するのは「社会統合」についてだ。これは、「社会」の「統合」について説明しているものと考えられる。この二つのうち「統合」のほうは「二つ以上のものを合わせて一つにすること」と辞書的には説明される。こ…

「偶発性」の概念とそれが二重であることの理解

宮台真司氏が「連載第十回:二重の偶発性とは何か」で説明するのは「二重の偶発性」というものだ。ここで語られている「偶発性」という言葉は辞書的な意味に近い。それは基本的には「必然性」に対立するものとして理解される。宮台氏の言葉で言えば、可能性としては…

機能的側面から見た「制度」の概念

宮台真司氏が「連載第十一回:制度とは何か?」で語るのは「制度」という言葉の概念だ。これの辞書的な意味は、「社会における人間の行動や関係を規制するために確立されているきまり」というもので、「ルール」という言葉で言い換えることの出来るものだろう。ルー…

機能的側面に注目した「宗教」と「他者」の概念

宮台真司氏が「連載第九回 予期とは何か?」で触れていた「宗教」と「他者」の概念についてもう少し詳しく考えてみようと思う。宮台氏は、ここで「宗教」について「宗教とは、前提を欠いた偶発性を、無害化して受け入れさせる機能的装置です」と語っている。ここで…

信頼の本質としての「予期」の概念

宮台真司氏が「連載第九回 予期とは何か?」で語る「予期」という概念を考えてみたい。この回の講座では「予期」のほかにも重要な概念がいくつか提出されているのだが、まずは「予期」という最重要な概念について、その明確なイメージをつかむことに努力してみようと…

社会における「合意」と「信頼」(個人の場合とどう違うか?)

宮台真司氏は「連載第八回 社会秩序の合意モデルと信頼モデル」では、「合意モデル」と「信頼モデル」という考察で、社会が持つ秩序(確率的に低い状態が実現すること)の出発点となるものを考えている。社会が定常性という秩序を持つのは、ある種の状況の変化が特定…

選択前提理解のための「自由」の概念

宮台真司氏は「連載第7回 選択前提とは何か」の中で「自由」の概念について詳しく説明している。これは「選択前提」という言葉の理解のために、その「選択」が「自由」に選べるということの意味の理解が必要だからだ。「自由」に選べないような、これしか選択肢がないと…