社会

個室ビデオ店放火事件の背後に潜む構造

個室ビデオ店放火事件に関しては多くの新聞がそれを社説として論じている。それは、この事件を単なるニュースとして扱っているのではなく、ここに現代日本が抱える問題点が象徴的に現れていると判断しているのだろう。だが、各社が語るその問題提起は、どう…

グリーンピースへの扱いのどこが不公平なのか

さえきさんという方から「現代社会で論理に対立するのは非論理ではなく感情だ」というエントリーのコメント欄に、「「その前提となることが恣意的で公平さを欠く」という根拠が、いまひとつわかりませんでした」という疑問を呈するコメントをもらった。「公…

現代社会で論理に対立するのは非論理ではなく感情だ

宮台真司氏の社会学的な言説の中には、原初的な社会では誰もが同じ感情を有していたので、誰もが同じ判断をしていたというものがある。これはある意味では、思考のルールというものがはっきりと決められていて、そのルールに従った思考の流れしか持てなかっ…

秋葉原の事件を「テロ」と受け止める感性

今週のマル激では、東浩紀氏(批評家・東京工業大学世界文明センター特任教授)をゲストに迎え、秋葉原で起こった「通り魔事件」に関して議論をしていた。東氏はこの事件を「テロ」という言葉で表現していた。これは僕には見えていなかった視点だったが、東氏の…

パラドックス的な現象の理解

世の中には、「こうなっているはずだ」あるいは「こうなっていて欲しい」というようなことがいくつかある。しかし現実にはその期待はしばしば裏切られ、「なぜこうなっているんだろう」というような理不尽な思いを抱いた人は多いのではないかと思う。自分が抱いてい…

空気を読むこととそれに支配されること

今週配信されたマル激では、ドキュメンタリー映画「靖国」の上映中止問題を中心にして言論の自由の問題が議論されていた。ある種の表現に対して、それに感情的に反発する人の圧力で、その表現が封じ込められるというのはまさに「言論の自由」に抵触する問題になるだ…

最近の問題に関数的観点を応用してみる

最近のさまざまな事件に対して、それを関数的に捉える、すなわち何らかの法則性をもった装置がそこにあるのだという観点で見てみるとどんなことが見えてくるかというのを考えてみたい。関数的視点というのは、物事の解釈の一つではあるのだが、どんな解釈も…

行為の基礎にあるものは善意なのか悪意なのか

母親を殺害した高校生のニュースに比べると「社保庁汚職:指導医療官、東京歯科大同窓会から現金」で伝えられるニュースは、日本社会ではよく見られる現象であり平凡なもののように見える。しかし、衝撃的なニュースのほうが、その内実は案外と抽象しやすく…

被害者感情への配慮

死刑廃止論は、被害者への感情の配慮が足りないと言う批判が言われるときがある。加害者に対する報復感情というものがある間は、凶悪犯罪に対して、その罪の重さに応じた死刑もやむを得ないとする考え方だ。しかし、犯罪被害者の遺族である原田正治さんは、…

亀井静香さんの死刑廃止論 2

亀井さんの第三の論点である冤罪の可能性について考えてみたいと思う。これは、死刑廃止論者が必ず取り上げるものであるが、亀井さんは元警察官僚だけに、その語り方にもリアリティを強く感じるものがある。実際に冤罪が作り出される現場にいたと言うことの…

亀井静香さんの死刑廃止論 1

亀井静香さんの講演をまとめた『死刑廃止論』(花伝社)という本を買った。「死刑廃止 info! アムネスティ・インターナショナル・日本死刑廃止ネットワークセンター」というページに載せられている、「死刑制度の廃止を求める著名人メッセージ」の中の亀井さ…

国家権力の暴走に対する「恐れ」の感覚

昨日は「人権感覚」というものを身につけることの難しさを考えたが、日本においては国家権力に対する感覚を磨くこともたいへん難しいものになっているように思われる。自由や民主主義を、国家権力との戦いによって勝ち取ってきた西欧なら、国家権力はよく監…

「人権」について考える(続き)

さて、「人権」についてもう一つ大事なことが中山さんの本には書かれているので、それを考えてみたいと思う。それは「人権感覚」と呼ばれるものだ。「人権」というものを、その歴史的な成立過程を理解することで、人間であれば誰でも持っている当然の権利だ…

「人権」について考える

死刑廃止の問題を考えるとき、「人権」というものが大きく関わってくる。死刑に反対することは、加害者の人権を守ることにはなるが、被害者の人権を無視しているのではないかという疑問が提出されることがあるからだ。このことに関しては、宮台真司氏なども…

凶悪犯罪の加害者に対して死刑を望まない被害者遺族がいた

「ふらっと 人権情報ネットワーク」というページに「加害者は許せない だけど死刑には反対です」という、犯罪被害者の遺族である原田正治さんのメッセージがあった。これは、犯罪被害者の遺族の直接の声として、死刑廃止を考える人にとっては貴重な情報にな…

死刑廃止に対する感情的反発にどう答えるか 2

感情の問題というのは、感情で判断することがふさわしいというものがあるだろうと思う。形容詞で表現されるような問題は、だいたい感情で判断してもそれほど間違いはないのではないかと思う。例えば好き・嫌いというものに関しては、何が好きでも、何が嫌い…

死刑廃止に対する感情的反発にどう答えるか 1

中山千夏さんは、第二章で「ヒットラーでも死刑にしないの?」ということを論じている。これは、本の題名にもなっていることなので、おそらく非常に重要なものと考えているのだと思う。死刑廃止論を、理屈では認めながらも、感情がそれを認めないという、感…

死刑は殺人か 2

中山千夏さんの死刑廃止論は、犯罪による殺人も死刑による殺人も同じものだと言うことを論拠に、犯罪による殺人が許されないものであるなら、同じように死刑による殺人も許されないことだという展開をする。これは、前提となる、「殺人」という点では両者は…

死刑は殺人か 1

中山千夏さんの死刑廃止論である『ヒットラーでも死刑にしないの?』(築地書館)という本を読んでいる。僕は、総論としての抽象論である死刑廃止には賛成だ。抽象的な論理としての結論では、死刑は廃止する方向で考えることが、民衆としての立場としては正…

凶悪犯に対し、感情抜きの論理的考察が出来るか

すでに故人となったが、大分県中津市の作家・松下竜一さんに『汝を子に迎えん』(河出書房新社)という本がある。松下さんは、ノンフィクションの作品をたくさん残している人で、これは、ある殺人犯を養子として迎えた牧師夫妻を追いかけたノンフィクション…

死刑廃止論を考える 4

「死刑廃止 info! アムネスティ・インターナショナル・日本死刑廃止ネットワークセンター」というページに載せられている、「死刑制度の廃止を求める著名人メッセージ」の中の中山千夏さんの死刑廃止論を考えてみようと思う。中山さんは、 「死刑制度で、自…

死刑廃止論を考える 3

「死刑廃止 info! アムネスティ・インターナショナル・日本死刑廃止ネットワークセンター」というページに載せられている、「死刑制度の廃止を求める著名人メッセージ」の中の亀井静香さん(衆議院議員、死刑廃止議員連盟会長)の言葉で、冤罪を語ったものも…

死刑廃止論を考える 2

「死刑廃止 info! アムネスティ・インターナショナル・日本死刑廃止ネットワークセンター」というページに載せられている、「死刑制度の廃止を求める著名人メッセージ」の中の亀井静香さん(衆議院議員、死刑廃止議員連盟会長)の文章に、僕は非常に強い説得…

死刑廃止論を考える 1

たとえ死刑であっても、人が殺されるのを見るのは嫌だというような感情論ではなく、一般論としての死刑廃止論を考えてみたいと思う。もし感情論を基礎にして考えるなら、被害者の報復感情が何よりも優先されると言うことは、感情としては反対出来ない問題に…

感情に流れる議論

山口県光市で起こった痛ましい犯罪事件の裁判について語ったブログを見て感じたことがある。この事件は、犯罪の衝撃的な現象もさることながら、あくまでも極刑の死刑を求める被害者遺族と、その意を汲んだ検察に対しての、死刑廃止論者でもある弁護士の発言…

二流問題

二週間前に、マル激トークオンデマンドでは、神保哲生氏の小学校時代の同級生という『拒否出来ない日本』(文春新書)の著者の関岡英之さんをゲストに招いて議論をしていた。その議論の中で「二流問題」というものが提出された。例えば竹中大臣は、学者が政…

ライブドアの犯罪性

マル激トークオン・デマンドで上村達男氏(早稲田大学法学部教授)を迎えて、「第252回ライブドア事件が問う「日本は本当にアメリカ型の市場システムでいいのか?!」」というライブドアに関する問題を扱っていた。これで、ようやくライブドア問題の一端が分…

証券取引法

ライブドアは、証券取引法違反の疑いで取り調べを受けているという報道はたくさん目にするのだが、いったい何が悪くて調べられているのかと言うことを分かりやすく報道したニュースにお目にかからない。具体的には、どのような行為が違法行為になったと判断…

ホリエモンの逆襲はあるか

マスコミの報道は、まだ容疑者に過ぎない堀江氏が、すでに犯罪者であるかのような書き方で埋まっているが、これもマスコミの非ジャーナリズム性のあらわれなのだろうか。このような警察側からの情報の垂れ流しに対処するために、違法性と犯罪性の区別がある…

情報による支配

以前に、強圧的な女教師が小学生を支配するという設定のテレビドラマをちらっと見た。かなり評判のドラマだったらしいが、僕は一シーンを見ただけだった。だから、それが何を描きたかったのかは知らないが、印象に残ったのは、情報によって人間を支配するこ…