雑文

マルクス理解の難しさ

僕はマルクスの『資本論』に何度か挑戦してその都度挫折している。それは、マルクスの叙述の抽象度の高さにあると今までは思っていた。抽象のレベルが高すぎるので、その過程を追うことが難しく、現実のどの面が捨てられていっているかを理解することが難し…

西部邁氏と宮台真司氏の柳沢発言解釈

今週配信されたマル激の中で、ゲストの西部邁氏と宮台真司氏が柳沢発言について語っている部分がある。内容的には、僕が以前に考えていたようなものと重なると思った。それが数学系的な文脈であればさほど問題にするようなものではないと言うものだ。むしろ…

他者の経験を事実として受け取るときの認識

社会的な存在である人間は、自分だけの体験の世界だけではなく、他者の体験を自分で追体験することで世界を広げることが出来る。外界に対する広く深い認識が出来るのも、われわれが他者の経験を追体験して、自分で体験するだけでは得られないたような世界を…

理科系(数学系)的発想と文科系(芸術系)的発想

江川達也氏がゲストとして出たマル激では、江川氏とともに宮台氏が理科系と文科系について言及していた。これを「数学系」「芸術系」と呼んだほうが正確だろうというような発言だったと記憶している。僕もそう感じた。日本の大学では経済学は文科系のほうに入っ…

著作権はどこまで守られるべきなのか

まだブログが主流になる前に楽天では日記形式のホームページサービスをしていた。僕がそれをはじめたのが2002年の1月だった。かれこれ5年程がたっただろうか。その楽天がまだ日記だったころ、自分のページに貼り付けていた画像などについて著作権法違…

ナショナリズムの一般的意味と日本における特殊性

宮台真司氏が「宮台真司 週刊ミヤダイ」というインターネット・ラジオの放送でナショナリズムについても語っていた。暮れの最後の放送で語っていたのだが、これも「目から鱗が落ちる」という体験をさせてくれるもので、それまで持っていた先入観に揺さぶりを…

歴史観という先入観(価値観を伴った思い込み)

戦争の記憶を語るときに、日本政府の見解が中国や韓国から批判されることがある。これは、被害を受けた人々の見方は、加害の立場での見方とは違うということを物語っているのだが、その際に「歴史認識」とか「歴史観」という言葉で語られている内容はよく考える…

正義の実現と権力

権力というものを抽象的に考察していくと、それが合理的に機能しているときは、われわれはほとんどその存在に気が付かないのではないかと思う。権力がうまく機能していると、われわれはそれを気にする必要がないほど安定した社会が営まれているといえるだろ…

抽象的対象としての権力と現実の統治権力

学問と呼ばれる種類の理論や科学的思考において対象として設定されるものは、ほとんどが何らかの抽象過程を経て得られるものだ。現実に存在しているものがそのまま対象になることはない。現実の対象は、抽象的対象を理解する助けとはなるが、それをそのまま…

優等生病・一番病と亜インテリの関係

宮台真司氏が「学生諸君が考えるべきこと〜宮台真司インタビュー[中編]」の中で語るところによれば「優等生病」とか「一番病」とか呼ばれるものは次のようなものになる。 「対米自立を長期的目標とした途端に、少なからぬ官僚は、「一流国における三等官僚にな…

権力のもつ有効性

現在の日本の社会状況は、規律の乱れや道徳の荒廃が指摘されることが多いのではないだろうか。学校においても、学力の低下や、自由が放縦の様子を見せるなど、いわば勝手なふるまいをする子供たちを育てているように見える。かつての日本では、人々はもっと…

個人の自由を支える国家の権力

『自由とは何か』(佐伯啓思・著、講談社現代新書)という本に大変興味深い記述があった。そこでは3年前のイラク人質事件に関連して、自らの自由意志でイラクに行った彼らの責任が、意志の「自由」というもので論理的に導出できるかと問いかけていた。佐伯さ…

近代過渡期・近代成熟期と自由の問題

宮台真司氏が「連載第7回 選択前提とは何か」の中で「自由」について記述している。この「自由」は「意志の自由」であり、いくつかの選択肢がある中で、その中のどれを選んでもいい・「自由」にどれかを選べるという意味での「自由」だ。面白いのは、この「…

社会における「法」の本質を考える

宮台真司氏が「連載第二〇回:法システムとは何か?(上)」の中で「法」というものを語っている。この定義も、日常感覚からするイメージから言うと少しかけ離れているように見えるが、社会というシステムを理解するには有効性を感じる定義になっている。宮…

ある目的を持った言葉の定義−−概念(抽象化)は、それによって何を明らかにしようとするかという目的によって決められる

宮台真司氏が「連載第一八回:宗教システムとは何か?(上)」の中で宗教を「前提を欠いた偶発性(=根源的偶発性)を無害なものとして受け入れ可能にする機能(を持つ装置の総体)です」と定義している。これは、一般的に考えられている辞書的な定義とはかな…

3年という微妙な時間の経過に時代の差を感じる

内田樹さんの「「若者はなぜ3年で辞めるのか?」を読む」というエントリーを見て、「3年」と言うことが印象に残った。個人的な経験から感じるものでは、僕が職に就いた26年前は、3年勤めればあとはいくらでも勤められたという感じがしたからだ。3年と…

「ファシズム」概念を抽象する 1

『ファシズム』(アンリ・ミシェル著・文庫クセジュ)という本をヒントに、「ファシズム」の概念が出来ていく過程を考えてみたいと思う。概念というのは、思考を進める出発点になるものだ。たとえば数学などで、「偶数とは2で割り切れる整数のことである」…

「ファシズム」について考える−−特に抽象の過程について

「ファシズム」の概念やイメージについては専門家でさえも一致したものがないそうだ。これは現実を対象にした考察ではしばしばそういうことが起こるのではないだろうか。現実からある概念を抽象するとき、その対象をどういう視点から見るかで抽象の過程が違…

組織のタコツボ化の問題とイメージの一人歩きの問題

丸山真男の『日本の思想』(岩波新書)には「思想のあり方について」という文章がある。これも講演記録を起こしたような文章で、平易な語り口で書かれたものだ。そこでは最後に、当エントリーの表題に書かれたような「二つの問題に焦点を置いてお話をした」…

丸山真男の見事な弁証法論理の展開

僕は丸山真男という人の文章を詳しく読んだことがなかった。何となく時代の違いを感じていたことと、古典と呼ぶほどの存在にも感じなかったので、より問題意識が重なる現代的な宮台真司氏などの文章に親しんでいた。丸山真男に関しては、宮台氏が高く評価し…

ファシズムの概念

pantheran-onca さんが「2006年12月24日 バックラッシュの奥に潜むものと丸山真男」というエントリーのコメント欄に書いた「丸山が戦時中の日本を「ファシズム国家」と規定したこと」が間違いだったと言うことは、「南京大虐殺があったか無かったか」という…

被害感情が判断の基準になる危うさ

今週配信されたマル激の議論の中で、いじめ問題を巡って宮台氏の次のような発言があった。それは、いじめに限らずセクハラ問題などでも、被害者がそう感じたと言うだけでそこに「いじめ」や「セクハラ」があったと判断するような議論があるが、これをどう考…

現行制度から利益を得るステイクホルダー(利害関係者)

現行制度に何らかの問題があって、それが原因で不都合が起きているとき、その不都合を解決するには制度そのものを変えなければならないと言うことが起きてくる。これは、不都合と言うことを感じなければ問題解決の動機も生まれてこない。まずは、どんな不都…

「批判」の本当の意味

障害児教育との関わりから、以前に津田道夫さんの著書の感想を書いたことがあった。津田さんは戦後マルクス主義に詳しい人なら知っている人で、マルクス主義理論家として三浦つとむさんともつきあいのあった人だ。大西赤人さんが障害のゆえに高校の入学を拒…

「バカ左翼」と「バカフェミニスト」と「バカ右翼」の関係について

「バカ左翼」「バカフェミニスト」「バカ右翼」という言葉についている「バカ」という言葉は、非常にインパクトの強い響きを持っているので、それだけで反発を感じてしまう人がいるかもしれない。だが、内藤朝雄さんや宮台真司氏が語る意味での「バカ」とは…

バックラッシュの必然性

バックラッシュというのは、保守的な層からの過剰な反動としてリベラルの側への不当な攻撃がされるというふうに僕は解釈している。それが不当であるという判断をもっていながら、それが起こってくる必然性を考えるのは、バックラッシュの正しさを考えようと…

理論と実践(あるいは科学と現実)の問題

現実と乖離した理論というものを考えていたら、これも弁証法的に捉えることが出来るのではないかという感じがしてきた。普通は、現実と乖離した理論は、現実への有効性を欠くことになり役に立たないとされてしまうことが多いだろう。しかし、現実と乖離して…

左翼(学校)の全体主義

いじめ問題を扱ったマル激の議論の中で、ゲストの内藤朝雄さんが言った「右翼も左翼も全体主義が好きだ」という言葉が印象に残った。この場合の「右翼」と「左翼」は定義が曖昧な言葉だが、多くの人からそう見られている集団という程度に受け止めればいいの…

自分の素質と才能を知る−−夢とその断念について

休みの日は、youtubeで見つけた押尾コータローという人のギター演奏に聴き入っていた。なかなか見事なテクニックと楽しそうに演奏するその姿に好感を持って見入っていた。そして彼が自分について語った番組のクリップを見て、ますます好感の度が強まったのを…

脱ダムの現場で考える

msk222さんと一緒に、ワインオフ会の二日目を利用して脱ダムの現場を見てきた。ワインオフ会そのものの報告は、他の参加者がしてくれると思うので、それには触れずに、この脱ダムの現場について語ろうと思う。この現場を見たからと言って、素人が分かること…