2007-01-01から1年間の記事一覧

一般理論の法則性を本質論的段階として理解するには

宮台真司氏の社会学入門講座の「連載第二回:「一般理論」とは何か」では、「一般理論」というものが語られている。これが「理論」と呼ばれているのは、何らかの法則性を語っているからだと思われる。しかも「一般」であるということからは、これが本質論的段階にあ…

社会が持つ秩序を法則性として認識する

宮台真司氏の「連載第一回:「社会」とは何か」という文章の中には、「不透明な全体性としての社会の秩序は、いかにして可能か」という問いかけがある。社会の中のさまざまな出来事が、確率的な偶然性だけに従って起こるなら、その秩序というものは単純なものに…

法則性の認識の段階を考える

法則性は言葉で表現しただけでは、それがどの段階にあるかは分からない。認識の段階として、どのように理解していれば三段階論におけるどの段階に相当するのかという問題を考えてみようかと思う。題材としては、宮台真司氏の社会学入門講座から拾ってみよう…

本質論的段階は、何故に「本質」と呼ばれるのか

三段階論において現象論的段階で言われる「現象」や、実体論的段階で言われる「実体」というもののイメージは、多少の差異はあっても大筋では同じものであることが多いのではないだろうか。「現象」は、表に現れ・目に見えたそのままのものを記述すればいいのだと…

三段階論の各段階の特徴

武谷三男さんの三段階論というのは、法則的認識というものが、本質的な段階にまで高まっていく発展の様子を三段階のものとして解明したものである。これは、板倉聖宣さんによれば三つでなければいけないものらしい。二つになったり四つになったりすることは…

社会科学的な法則性と自然科学的な法則性

板倉聖宣さんは「武谷三段階論と脚気の歴史」の中で、武谷三段階論は「法則性」の認識の発展の段階を語ったものだと指摘している。重要なのは、その認識が「法則性」の認識であるということで、科学としての認識と言い換えてもいいだろうと思う。ところで科学は…

現象論的段階の徹底とその克服

板倉聖宣さんによれば「武谷三段階論と脚気の歴史」で語っているように、現象論的段階というのは、それを越えて実体論的段階に行こうと決心したからといって、主観でそれを克服できるものではない。客観的状況によってそれは決まる。どれほど自分が願ってい…

法則的認識について

板倉聖宣さんが、「武谷三段階論と脚気の歴史」という文章の中で武谷三段階論に関して語っているのだが、その中の「法則的認識」という言葉が気になった。武谷三段階論というのは、科学的認識の発展段階を三段階に分けて、その必然的移行について語ったものだ…

国家概念抽象の過程 5

萱野稔人さんは『国家とは何か』の中で、マックス・ウェーバーの次の言葉を引いて論理を展開している。 「国家とは、ある一定の領域の内部で−−この「領域」という点が特徴なのだが−−正当な物理的暴力行為の独占を(実効的に)要求する人間共同体である」 この言葉…

国家概念抽象の過程 4

萱野稔人さんは『国家とは何か』の中で「国家を思考するためには、今の国民国家のあり方を自明なものとみなすナイーヴな見方から決別することが不可欠だ」と書いている。これはなかなか示唆に富んだ言葉で、ここから多くのことを学ぶことが出来る。国家を思考…

格差は悪いことなのか

内田樹さんの「格差社会って何だろう」というエントリーが話題を呼んでいるようだ。はてなのブックマークも300近いものがつけられていた。これが話題を呼んでいるのは、内田樹ともあろうものがなぜあのような駄文を書くのか、という見方をされているから…

国家概念抽象の過程 3

萱野稔人さんに寄れば国家とは「暴力に関わる運動」だと概念規定される。国家というのは、何か暴力が関わるような現象があったとき、すなわち国家ではないいずれかの主体が暴力行使をしたときに、その主体を取り締まり処罰する権能を持つ。暴力行為に反応して…

国家概念抽象の過程 2

萱野さんは国家の定義の考察をウェーバーの次の言葉を取り掛かりにして始めている。 「国家とは、ある一定の領域の内部で−−この「領域」という点が特徴なのだが−−正当な物理的暴力行使の独占を(実効的に)要求する人間共同体である」 ウェーバーは「正当な物理的暴…

国家概念抽象の過程 1

萱野稔人さんの『国家とは何か』(以文社)を手がかりに、国家という概念が抽象されていく過程を考えてみたいと思う。国家という概念は、愛国心論議のときにも、それぞれの主張する愛国心の対象としての「国」というものがどうも違うものであると感じるように…

最近の問題に関数的観点を応用してみる

最近のさまざまな事件に対して、それを関数的に捉える、すなわち何らかの法則性をもった装置がそこにあるのだという観点で見てみるとどんなことが見えてくるかというのを考えてみたい。関数的視点というのは、物事の解釈の一つではあるのだが、どんな解釈も…

抽象概念の直感的理解

今年度の数学の授業では関数を扱っている。関数というのは、数学の中でもなかなかの難物で、これを単にxとyとの数式だと捉えて計算をするだけだと解釈すると、関数本来の持っている深い意味を理解するのは難しい。計算が出来るようになれば、関数を道具と…

「しょうがない」(不可避性)のロジック

「しょうがない」という判断の認識を考えるとき、これを、「それ以外に方法がない」「避けうることが出来ない」という意味で解釈すると、ある種の必然性を語っている言葉として受け取れる。この必然性に二種類のものが考えられるのではないかという感じがし…

弁証法的矛盾と形式論理的矛盾

「リカちゃん人形問題に関連して、規範と美意識の区別」というエントリーで紹介されていた「リカちゃん人形問題」というものが、形式論理的に面白い対象になるのではないかと思った。元ネタになるのは、「[考察]リカちゃん人形問題」というエントリーになる…

強力なアルゴリズムの発見が、形式論理的な難問の解決を可能にする

アルゴリズムの心地よさは、その繰り返しが与えるリズム感として、感覚的な心地よさがある。この心地よさにはまってしまった人は、この感覚を味わうことに快感を感じ、繰り返し同じことをすることに飽きることは無いのだろう。これは、好みのスポーツで楽し…

アルゴリズムの心地よさ

ナンバープレイス・イラストロジック・ループコースというパズルに共通するのは形式論理のみを使ってそのパズルの解答を求めるということだ。ナンバープレイスで言えば、ある数字がその枠に「入る」か「入らない」かという排中律と、同時に両方が成立しない…

無限の考察あれこれ

「2006年03月03日 実無限と可能無限」というエントリーのコメント欄で武田英夫さんという方が幾つかの疑問を提出しているが、これに対して数学的にどう答えるかということを考えてみたい。無限ホテルのたとえと無理数である円周率の有限小数表現については以…

小室直樹氏の南京大虐殺否定論

南京大虐殺否定論として語られている言説に対して、今まで僕はあまり関心を引かれなかった。それは事実をめぐる否定論のように感じたからだ。事実というのは、石ころの存在すら主張するのは難しいと哲学で言われるように、それは100%確かだというのは難…

宮台真司氏の左翼批判

無料で視聴できる第326回のマル激トークオンデマンドは、小林よしのり氏と萱野稔人氏を迎えてナショナリズムの問題を中心に議論をしていた。愛国心を教育基本法の中に盛り込み、愛国を叫んでいる安倍政権の中心にいるエリートたちがいかに愛国心に欠ける…

「しょうがない」という必然性(不可避)の判断

原爆投下に関して、それが「しょうがない」ものであるのかどうか、避けようのない決定だったかということの是非を考えてみたいと思う。もしこれが肯定的に判断できるものであれば、久間氏の判断は、客観的考察の結果としては正当だといえる。しかし、肯定的に…

新聞社説に見る久間発言批判 2

久間発言を取り上げた新聞社説は多いものの、そのほとんどは「しょうがない」という言葉で語られた内容そのものよりも、それが原爆投下を「容認」したかのように語ったと誤解されたことを批判したものばかりだ。この誤解が、犠牲者の犠牲もやむをえなかった…

久間発言の形式論理的考察

久間防衛相が「しようがない」という発言によって辞任をした。このことについては、多くの報道があり、また多くの人がブログなどで言及しているようなのだが、何が問題なのかというのが余り明確になっていないように感じる。原爆被害者の感情を逆なでするよ…

新聞社説に見る久間発言批判 1

新聞社説は、短い報道記事と違って、どこがどのように批判されなければならないかが一応まとまって書かれている。この批判の形式論理的構造を考えてみたいと思う。形式論理において、ある命題Aを否定したい時は、Aを仮定して論理を展開したときに矛盾が導…

科学における武谷三段階論と機能主義

三浦つとむさんが高く評価していた人に物理学者の武谷三男さんがいる。特に高く評価していたのは三段階論という、科学理論の発展の論理を抽象したもので、『弁証法の諸問題』という著書の中の「ニュートン力学の形成について」という論文で語られていた。科…

原理的な決定不可能性とはどういうものか

決定不可能性というのは、ある判断が確定しないということを意味する。世界のあり方として、いくつかの選択肢が考えられるとき、その選択肢のどれが実現しているかということが確定しないとき、現在の状態は決定できないと考えられるだろう。この決定できな…

現象をうまく説明する理論の真理性(機能主義との関連を考える)

量子力学について、『量子力学の基本原理』の中では、著者のデヴィッド・Z・アルバート氏は「アルゴリズム」であると書いている。「アルゴリズム」とは、形式論理に従った、ある計算法のことを指す。この「アルゴリズム」を使えば、量子現象が今どのような…