2006-01-01から1年間の記事一覧

抽象理論の現実への応用の論理的構造を考える

数学というのは、それ自体は抽象化された世界を記述する理論になっている。ある意味では現実とは全く関係のない世界を独自に創造しうる。しかしそれは、ある条件の下に現実に適用され応用される。応用を考えられていない、理論のための理論という抽象論はあ…

パターナリズムの問題点

「夫婦別姓」の問題と「日の丸・君が代強制」の問題は、全く別の問題のように見えるが、そこには共通した構造も見ることが出来る。それは、どちらも選択の自由がなく、自己責任による自己決定権を持たないと言うところだ。法的に認められた結婚をしたいと思…

ナショナリストとポピュリズム

安倍新総理の人気の要因の一つにナショナリストであるということが言われている。ナショナリストというのは、いろいろなイメージを持った言葉で、僕などはあまりいい印象を持っていない。だから、人気の源泉がナショナリストであるということにあると言われ…

新聞社説に見る「日の丸・君が代強制」に関する考え方

山陰中央新報の「国旗掲揚・国歌斉唱/自然体で定着させよう」という社説には共感出来る事柄が多い。ここでは、東京地裁が示した判断で、「国旗に向かって起立したくない教職員や国歌を斉唱したくない教職員に懲戒処分をしてまで起立させ、斉唱させることは…

自由が保障されている権利の根拠を考える

民法改正によって、「選択的夫婦別姓」という行為を法的にも正当な行為にしようという方向は、「姓(=法的な氏)を自由に選択する」という行為が、自由の行使として正当性を持っていると考えられるならば、そこには反対する理由は何もなくなる。自由として…

「選択的夫婦別姓」は家族の絆を壊すか?

家族という面から「選択的夫婦別姓」に反対している考え方を論理的に検討してみたいと思う。エントリーのタイトルは反語的に使ったもので、僕の直感としては「そうではない」という結論を導きたいと思っているものだ。その論理展開のポイントは、「選択的夫…

憲法で保障された「思想・良心の自由」

「思想・良心の自由」というものをひどく勘違いして理解している人がいるような気がする。「思想」と「良心」というものを、辞書的に解釈すると平たく言えば次のようなものになる。 「思想」=「心に思い浮かべること・考えること・考え」 「良心」=「善悪…

靖国神社の遊就館の記述修正続報

PPFVさんが「[毎日新聞]靖国神社遊就館:米が批判の記述修正 アジア関連は変えず」というエントリーで紹介している毎日新聞の「靖国神社遊就館:米が批判の記述修正 アジア関連は変えず」という記事に、非常に興味深い内容が書かれている。この修正に関して…

脱ダム宣言の正しさを論証する

永井俊哉さんが「脱ダム宣言は間違いだったのか」という文章を書いている。このタイトルは反語的な意味を込めて使っているもので、結論としては「間違いではない」と言うことを主張している。永井さんは結びの言葉で、 「洪水対策、給水、発電といったこれま…

高市氏の行為の意味を考える

高市氏の行為の意味というものを考えてみようと思う。それは、現象として見た場合には、誰もが同じ記述をするような客観的な側面を観察することが出来る。宮台氏が定義した「行動」という側面で言えば、次のような記述は誰も反対しない事実と言うことになる…

「夫婦別姓」は「夫婦別姓」ではないのかどうか

高市早苗氏が、結婚して山本性になったはずなのに、未だに高市姓を名乗っているのは「夫婦別姓」ではないかという素朴な疑問を考察している。高市氏は、「夫婦別姓」を法的に認めるという法案に反対していたので、この行為は、反対していたことを自ら行うこ…

ある定義に従っていることの論理性を考える

昨日のエントリーの「「知られていない重要な情報の集め方」のコメント欄」で、mizoreさんから貴重な情報をいただいた。高市氏の言動に関する情報で、高市氏が結婚しているにもかかわらず、夫婦で違う姓を名乗って活動しているのは、「夫婦別姓ではない」と…

知られていない重要な情報の集め方

僕は、神保哲生・宮台真司両氏の「マル激トーク・オン・デマンド」で新しい情報に接することが多い。ここで接する情報を新しいと感じるのは、それが他の媒体では得られないからだ。特にマスコミのニュースでは決して流れてこないような種類の情報がここには…

文脈を理解することの難しさ

三浦つとむさんは『言語学と記号学』(勁草書房)の中で「「差別語」の理論的解明へ」という論文で、文脈を理解することの重要性を語っている。これは、三浦さんの言語学からすれば当然の主張ではないかとも感じる。「差別語」であるかどうかを判断するのは…

安倍さんの所信表明演説の論理性を考える 2

安倍さんは所信表明演説(全文は「読んでみる?安倍首相・所信表明演説の「全文」」)の中で「美しい国、日本」について次のように語っている。 「一つ目は、文化、伝統、自然、歴史を大切にする国であります。 二つ目は、自由な社会を基本とし、規律を知る…

安倍さんの所信表明演説の論理性を考える 1

安倍新総理の所信表明演説の全文が「読んでみる?安倍首相・所信表明演説の「全文」」と言うページで読むことが出来る。この演説の論理性というものを検討してみようと思う。論理性を検討するというのは、そこに書かれている主張が正しいかどうかを検討する…

問題意識のずれを考える

シカゴ・ブルースさんの「ソシュール的な「語の意義」と「語の価値」」というエントリーを読むと、そこにかなりの問題意識の違いを感じる。これは、違いを感じるからと言って、シカゴ・ブルースさんが書いていることに批判的であると言うことではない。シカ…

言語における使用価値と交換価値のアナロジー

シカゴ・ブルースさんの「貨幣の使用価値」というエントリーを読んで、自分の論理というか、言葉の使い方である語彙に混乱があるのに気がついた。交換価値と言うべきところで使用価値という言葉を使ったりしているような気がした。これは、頭の中では思考が…

「語義」と「価値」−−語の意味

内田樹さんが『子どもは判ってくれない』の中で「語の「意味」には「語義」と「価値」の二つの種類がある」と書いている。これは、ソシュールが『一般言語学講義』で説いたもので、ソシュール的な視点からの「意味」の考察になっているそうだ。三浦つとむさ…

言語の意味について

三浦つとむさんは、『日本語はどういう言語か』のなかで、言語の意味を関係として捉えて説明していた。言語にかかわらず表現というものは、形式と内容のずれ(矛盾)が存在する。同じ形式(外見=音声・文字の形など)であるにもかかわらず、それによって伝…

杉浦法相が死刑を執行しなかったことの評価

ヤフーの「<杉浦法相>死刑執行せず 在任11カ月、命令書の署名拒む」というニュースによれば、杉浦法相が死刑執行命令書に署名しなかったことについて、正反対の評価がされているようだ。報道では、 「◇慎重な姿勢、評価 ▽石塚伸一・龍谷大教授(刑事法)…

「イズム(主義)」の論理−−イデオロギーに支配された思考

何とか主義による思考の展開は、マルクス主義の崩壊とともにかなり薄れてきたように感じるのだが、それが論理的な誤りがあったという認識はなかなか難しいのではないかと思う。本人は意識していなくても、「愛国主義」「道徳主義」のようなものが基礎にあっ…

植草一秀さんの小泉内閣経済政策批判

マル激の中で語られていた植草さんの、小泉内閣経済政策批判を論理的に理解する努力をしてみようかと思う。僕は経済学を専門的に勉強したことはないので、これが正しいかどうかという評価は出来ない。あくまでも論理的な整合性という面でのみこれを理解して…

林道義さんの善意 2

林さんのホームページ「フェミニズム批判」の中から、林さんの善意を感じる部分を探してみようと思う。ここにはかなりの量の文章がおいてある。まずは「1 なぜフェミニズムを批判するのか」という文章から探してみよう。そこには 「私憤・公憤という言葉を…

国会議員と大臣の違い

竹中大臣が、小泉政権の終わりとともに、参議院議員も辞職をしたいということを表明したのは15日のことだった。「<竹中総務相>議員辞職表明…「安倍政権」居場所なく」という報道によれば 「「小泉路線」の象徴的存在だった竹中平蔵総務相が15日、政権…

国旗・国歌に対する「強要の論理」と「拒否の論理」

東京都教育委員会が都立高校の教員に対して、卒業式・入学式等での「国旗への起立や国歌斉唱」を強制していたことが、思想・信条の自由を保障した憲法に反するという違憲判決が出た。これは画期的な判決だが、よく考えてみればごく当たり前のことを述べてい…

林道義さんの善意 1

内田さんが『私家版・ユダヤ文化論』で反ユダヤ主義者たちに対して次のような感想を語っていた。 「しかし、私が反ユダヤ主義者の著作を繙読して知ったのは、この著者たちは必ずしも邪悪な人間や利己的な人間ばかりではないということであった。むしろ、信仰…

瓜田に沓を納れず、李下に冠を正さず

『期間限定の思想(おじさん的思考2)』(晶文社)の中で内田樹さんがタイトルのような古諺を使って面白い公人論を語っている。政治家を始めとする「公人」は、どのような存在でなければならないのか、それを実に分かりやすく直感的に理解出来るように語っ…

竹中大臣の議員辞職の直感的理解と論理的理解 その3

河野太郎衆議院議員の「ふざけるんじゃねえ」という文章の論理的理解というものを考えている。論理的理解というのは、前提と結論の間に論理の飛躍が感じられず、その結びつきに納得出来るような理解をしようというものだ。竹中大臣の議員辞職には何かおかし…

竹中大臣の議員辞職の直感的理解と論理的理解 その2

河野太郎衆議院議員の「ふざけるんじゃねえ」という文章では、竹中大臣の議員辞職について 国会議員として選挙で選ばれたことと小泉総理に大臣として任命されたことには違いがある。 6年の任期があることは最初から分かっていたのだから、任期を全うすべき…